最新記事

ロシア

ウクライナの越境攻撃に殺気立つロシア国会、「プーチンのレッドラインは伸び縮みするのか」と批判

Russia state TV complains Putin's red lines are "elastic"

2023年3月2日(木)14時30分
ニック・モドワネック

プーチンのレッドラインはいつ発動するのか(2022年2月24日) Reuters TV/REUTERS

<ウクライナがロシア領内に入り込んで攻撃してきている現状は「受け入れがたい」、プーチンはなぜ放置しているのか>

ウクライナ軍はロシアの領土に簡単に手を出せる――歯に衣着せぬ発言で知られるロシアのある国会議員が、こう批判した。

世界のメディアに関する情報を収集・公表しているBBCモニタリング部門のフランシス・スカーがインターネット上に投稿した動画によれば、ロシアの国会議員であるアレクセイ・ジュラブリョフは国営テレビで次のように語った。「それが現在のシステムだ。ロシアのレッドライン(譲れない一線)はゴムでできており伸びたり縮んだりする。既にロシア領のクラスノダール地方まで(ウクライナ軍の攻撃は)きたが許している。今後もっと先まで伸びる可能性もある」

クラスノダール地方はロシア南部に位置し、トゥアプセ市の当局者によれば、この地方で2件の爆発が報告された。

ウクライナ内務省のアントン・ゲラシュチェンコ顧問は、3月1日にウクライナ軍のドローンがクラスノダール地方にあるエイスク空軍基地の近くで爆発したとしている。同基地はウクライナ軍の前線から約130キロメートルのところに位置し、ここまでの越境攻撃を許したのはロシアの恥にあたる。

ジュラブリョフは、厳しい冬を迎えた現在の戦況について、「受け入れ難い状況」だと語った。ロシアの冬の過酷な気候は、過去の複数の戦闘で敵を撃退してきたことから「冬将軍」と呼ばれている。

「奴らにきちんと罰を与えるべきだ」

「これは今やロシアの領土に対する攻撃なのだということを、彼ら(ウクライナ側)は、はっきりと理解すべきだ」とジョラブリョフは述べ、さらにこう続けた。「彼らはクリミアを攻撃し、そのほかにもクラスノダールやベルゴロドに対して相次いで攻撃を行ってきている。そろそろ彼らにきちんと罰を与えるべきだ」

ウクライナと国境を接するベルゴロド州とクルスク州の知事は、ウクライナ軍が繰り返し、境界を越えてドローン攻撃を仕掛けてきていると非難している。

ベロゴロド州のワレンチン・デミドフ知事は2月27日、市内で無人機3機の残骸が見つかったと明らかにした。けが人はいなかったということだ。

ジュラブリョフはこれまで、ロシアの特別軍事作戦について、称賛したり批判したりと、態度をコロコロ変えてきた。2月には、ロシアが「ウクライナを100%非武装化」し、NATOの非武装化を達成できる日も近づいていると大げさに褒めちぎっていたが、そのすぐ後には国営テレビ「ロシア1」の番組「60ミニッツ」の中で、ロシアのメディアは戦場の現実を伝えていないと批判していた。

ジュラブリョフは、ロシア軍に「もっと踏み込む」よう呼びかけている。

「大規模攻勢が順調ならば、なぜロシア軍はキーウ入りしていないのか」と彼は2月半ばに述べた。「私が理解していない何かがあるのだろうか。それとも今後、新たな地域の掌握についてのお祝いが予定されているのだろうか」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

BMW、第2四半期販売は小幅増 中国不振を欧州がカ

ワールド

ロシアに関する重要声明、14日に発表とトランプ米大

ワールド

ルビオ長官、11日にマレーシアで中国外相と会談へ 

ワールド

UAE、産油能力を一段と拡大する可能性も=エネルギ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 6
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 7
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 8
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中