最新記事

インド

クアッドでなく「I2U2」、トルコ救援に動いたインドの狙い

2023年2月27日(月)15時33分
フセイン・ハッカニ(元駐米パキスタン大使、ハドソン研究所上級研究員)、アパルナ・パンデ(ハドソン研究所研究員)
エジプトのシシ大統領、インドのモディ首相

訪印したエジプトのシシ大統領(左)とインドのモディ首相(1月25日、ニューデリー) ADNAN ABIDI-REUTERS

<インドと中東諸国の間の貿易・投資はこの10年で倍増。軍事面でも、インドはイスラエル兵器の最大の輸出先だ。インドは今、東方ではなく西方に目を向けている>

トルコ・シリア大地震で甚大な被害が発生すると、インドは非常に素早い動きを見せた。

直ちに100人の救援隊員と探索犬を被災地に派遣。医療スタッフと医療機器、医薬品も現地に送り、臨時の仮設病院も設営した。

これは人道主義の精神だけに基づいた措置ではない。この行動は、中東への関与を強めることを目指す政策の一環でもある。

インドは、長年の友好国であるイランに加えて、エジプト、イスラエル、ペルシャ湾岸のアラブ諸国との関係も強化しようとしてきた。

アメリカの中東への関与が減少し始めているなかで、インドがこの地域の有力プレーヤーとして台頭する可能性も浮上してきている。

実際、ここにきて中東でのインドの存在感は高まりつつある。この1月には、74回目のインド共和国記念日の式典にエジプトのシシ大統領が主賓として出席した。

昨年の7月には、インド、イスラエル、アラブ首長国連邦(UAE)、アメリカで構成される新しい枠組み「I2U2」の初めての首脳会談がオンラインで開催された。これは、インド太平洋地域で、日本、アメリカ、オーストラリア、インドで構成される「クアッド」の中東版とも呼ぶべき存在である。

インドとしては、米中対立やロシアのウクライナ侵攻によって中東の国際政治で力の空白が生じ別の勢力が現れることにより、自国の国益を害されないようにしたいという思いがある。

中東はインドにとって、投資とエネルギーの重要な主力供給地といえる。それに、中東諸国とインドは、イスラム過激派の活動やテロなど、安全保障上の関心事項も共有している。

中東とインドの経済的な結び付きは極めて強い。

現在、ペルシャ湾岸諸国に居住するインド人はおよそ890万人にも上る。国外で働いているインド人の祖国への送金額の半分(年間800億ドル)は、ペルシャ湾岸諸国からのものだ。

インドと中東諸国の間の貿易と投資もこの10年間で飛躍的に増加している。UAEはインドにとって第3位の貿易相手国、サウジアラビアは第4位の貿易相手国だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:中国で値下げ競争激化、デフレ長期化懸念 

ワールド

米政権、農場やホテルでの不法移民摘発一時停止を指示

ワールド

焦点:イスラエルのイラン攻撃、真の目標は「体制転換

ワールド

イランとイスラエル、再び相互に攻撃 テヘラン空港に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    【動画あり】242人を乗せたエア・インディア機が離陸…
  • 5
    メーガン妃がリリベット王女との「2ショット写真」を…
  • 6
    ゴミ、糞便、病原菌、死体、犯罪組織...米政権の「密…
  • 7
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 8
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未…
  • 9
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 10
    先進国なのに「出生率2.84」の衝撃...イスラエルだけ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 3
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 6
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 7
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 10
    救いがたいほど「時代錯誤」なロマンス映画...フロー…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中