最新記事

BOOKS

合同結婚式、韓国ではこんな「勧誘」がされていた......「宗教二世」日本人女性の壮絶体験

2022年12月28日(水)16時05分
印南敦史(作家、書評家)
宗教二世

写真はイメージです liebre-iStock.

<高校生だった頃、実母が統一教会に入信したという女性。母親の言葉に従って渋谷の「ビデオセンター」に通い始め......>

2022年を振り返ると、(そのきっかけが安倍元首相の暗殺だったとはいえ)旧統一教会の実態が明らかになったことには大きな意味があったと言えるだろう。もうひとつの重要なポイントは、元信者の意欲的な立ち回りによって、いわゆる「宗教二世」たちの生の声が聞こえるようになってきたことだ。

『カルトの花嫁――宗教二世 洗脳から抜け出すまでの20年』(冠木結心・著、合同出版)の著者もそのひとり。まだ高校生だった頃、実母が統一教会に入信したことから自身も洗脳されたという経験の持ち主である。


 母がとある宗教を信じ始めたことに気づきました。弥勒菩薩を本尊として祀っている小さな仏教の道場でした。そこで母は数万円の水晶のお数珠を購入したり、大理石の弥勒菩薩像を購入したり、願い事を叶えるために護摩木を書いたりして、突然まとまったお金を使うようになりました。熱心に通う母に連れられ、私も何度か足を運んだ記憶があります。
 キリスト教では再臨主のことを、「聖油を注がれし者」に由来する言葉としてメシアと呼んでいますが、仏教においては釈迦に代わって人々を救う未来仏、すなわち弥勒仏だと言われています。この弥勒仏(メシア)を信じない限り、堕落した人間は天に通ずることも、許しを請うこともできないと、その道場では説いていました。(6ページより)

この時点で仏教とキリスト教がごちゃまぜになっているので、ツッコミどころ満載である。著者の目から見ても違和感があったようなのだが、1992年になってその理由が明らかになる。母親は「集会がある」と告げ、東京ドームで開催された統一教会の合同結婚式に向かったのだった。


 仏教の道場に通っているとばかり思っていたのに、なぜ統一教会に繋がったのかが、どんなに考えても理解できず、頭の中はさらに混乱していきました。
 大会から帰ってきた母に、私はさっそく尋ねてみたのです。
「今日、東京ドームに行くって言ってたよね? もしかして統一教会なの?」
 母は一瞬驚いた表情を見せましたが、もう黙っていられないと思ったのか観念した様子で認めたのでした。のちにわかったのですが、日本人にはキリスト教の基盤がないため、仏教からの方が入りやすいという理由から、この道場が、統一教会への橋渡し的な役割を果たしていました。弥勒仏=再臨のメシアとは、韓国にいる文鮮明のことだと証していたのです。(8~9ページより)

引用が長くなってしまったが、ここは統一教会の嘘が明確に表れている部分なのでご理解いただきたい。いずれにしても母親は完全に洗脳され、家庭のこともおろそかになり、日常が"教会優先"になっていく。

そんな流れの中で著者も統一教会に足を踏み入れるのだが、そこには家庭の問題が大きく影響していたようだ。もともと両親の仲が悪く、父親は不倫、借金、ギャンブルに傾倒していた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...その正体は身近な「あの生き物」
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 6
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 7
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 8
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 9
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 10
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中