最新記事

環境問題

ポルトガルの事例が示した、80年後の世界の山火事と環境破壊の教訓とは?

A Harbinger of the Future

2022年12月26日(月)16時11分
パンドラ・デワン

「土地がやられてしまっても、適切な種類の在来種が育つようにしてやれば莫大な利益が期待できる。生物多様性を回復し、二酸化炭素を吸収し、より肥沃な土地に戻せる」

ポルトガルの教訓に学ぶ

ただし、この変化は一夜にして実現するものではないとクラウザーは言う。「在来種の多様な生態系を取り戻せば土中に水分を蓄えられ、火災に強い森になる。しかし大事なのは、それが地元の人々にとって経済的に持続可能な選択肢となるかどうかだ。在来種のコルクガシやオークは成長が遅いから、お金になるまでには時間がかかる」

『悪魔の息吹』が描いたのはポルトガルの片田舎の事例だが、そこから得られる教訓には普遍性がある。

「この猛烈な山火事で焼かれたのはポルトガルの片田舎だが、それを招いたのは気候の危機で、それは地球上の全ての人に影響する」と、ボン・アインシーデルは言う。「アメリカやオーストラリア、ブラジルやトルコ、ロシア。多くの国で山火事は起きていて、その悲惨さは誰もが身に染みているはずだ」

「私たちが撮ったのは、ポルトガルのどこかで起きた火災ではない。世界中のどこで起きてもおかしくない事態、このままだと避け難い未来の前触れだ」

そのとおり。小さな火花が1つあれば森は燃える。太陽の熱だけでも火種になる。干ばつと高温が続けば乾き切った木は燃えやすくなり、炎は時速20キロ以上で燃え広がる。アメリカだけでも、今年は6万1390件(11月現在)の山火事が発生し、3万平方キロ以上の土地が焼けたとされる。

「世界中で起きている山火事に気候変動が大きく関わっているのは間違いない」。英エディンバラ大学の防災専門家ロリー・ハデンはかつて本誌にそう語った。「アメリカでもそうで、(山火事との)闘いはますます困難なものになるだろう」。

実際、山火事が大規模化したせいで消火作業の経費は膨らんでおり、アメリカでは昨年、約44億ドルもの資金が投じられた。

放置されたたき火など、山火事に関しては人間の不注意も大きな危険因子となる。米政府の推定では、アメリカの公有地で発生する山火事の80%が人為的なものだ。

気温の上昇と山火事の発生件数の増加は続く。もう打つ手はないと思えることもあるだろう。でも、ここで負けてはいけないと、ボン・アインシーデルは強調する。

「人類は今、多くの課題に直面しているが、諦めてはいけない。立ち止まらず、前を向かねばならない。私たちの映画に登場する人たちのたくましさを見てくれ。あの生きざまが、みんなの心に響くことを願っている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豪CPI、1月は前月比0.4%上昇 コアインフレ加

ビジネス

1月企業向けサービス価格、前年比2.6%上昇 前月

ワールド

中国春節の9連休、国内旅行と消費支出を押し上げ

ビジネス

グーグル、データセンター向けに米電力会社2社と契約
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 5
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 8
    「極めて危険」──ゼレンスキー、ロシアにおける北朝…
  • 9
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 10
    武士はロマンで戦ったわけではない...命を懸けた「損…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中