最新記事

戦争

第二のウクライナ化を恐れるジョージア プーチンの動員令逃れるため11万のロシア人が避難

2022年12月5日(月)17時43分
徒歩でロシアからジョージアへ移動する人々

ロシアがウクライナ侵攻部隊の増強策として実施した部分動員の完了を発表してから1カ月が経過したが、招集から逃れようと隣国ジョージアへと脱出した多くのロシア人男性は、全く帰国を急いでいないという。写真は徒歩でロシアからジョージアへ移動する人々。9月、ベルフニー・ラルス検問所で撮影(2022年 ロイター/Irakli Gedenidze)

ロシアがウクライナ侵攻部隊の増強策として実施した部分動員の完了を発表してから1カ月が経過した。だが、招集から逃れようと隣国ジョージアへと脱出した多くのロシア人男性は、全く帰国を急いでいないという。

ロシアのプーチン大統領は9月21日、ウクライナの一部でのロシア軍撤退を受けて部分動員令を発表。前線へ送られる懸念から、対象年齢にある数万人の男性がジョージアやアルメニア、カザフスタンなどの国へ向かった。

ジョージア政府が発表した統計によれば、2022年に11万人以上のロシア人がジョージアへ避難した。こうした動きはジョージアに好景気をもたらす一方、反ロシア感情の強い同国内での反発も招いている。

ロシアのプーチン大統領やショイグ国防相が招集完了を発表して1カ月が経ったが、避難したロシア人の多くは、すぐに国へ戻ることはないと口をそろえる。

「何よりもまず、紛争を終わらせなければならない」と、ゲーム開発者のエミールさん(26)。ロシアから出国するために国境の行列に並び、2日を費やしたという。トビリシで行われた取材に対し、こう訴えた。

「男性をはじめ、誰もがリスクに直面している状況だ。私は自分自身の安全を第一に考えている。警察の前を歩いて通り過ぎただけで逮捕される可能性がある国には、もちろん戻りたくない。自由と安心が欲しい」

ロシア政府は動員令そのものは撤回しておらず、事前通告なく追加動員が発令されるのではないかとの憶測も広がっている。

「何がどうなればロシアに戻りたいと思うか、漠然と考えてはいる。ただ、今は、トビリシにあるアパートを6カ月借りて、営業登録もしている。あと6カ月はここにいるだろう」と、モバイルゲーム業界で働くスラバさん(28)は語る。

「ロシアで何が起きているか、注視するつもりだ。一部のことを除けば、進んで帰国したいとは思っている。ロシアで暮らすことは気に入っているし、ロシアが大好きだから」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エヌビディア決算に注目、AI業界の試金石に=今週の

ビジネス

FRB、9月利下げ判断にさらなるデータ必要=セント

ワールド

米、シカゴへ州兵数千人9月動員も 国防総省が計画策

ワールド

ロシア・クルスク原発で一時火災、ウクライナ無人機攻
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋肉は「神経の従者」だった
  • 3
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく 砂漠化する地域も 
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    一体なぜ? 66年前に死んだ「兄の遺体」が南極大陸で…
  • 6
    『ジョン・ウィック』はただのアクション映画ではな…
  • 7
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 8
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 9
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 10
    【独占】高橋一生が「台湾有事」題材のドラマ『零日…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 6
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 7
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 8
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 9
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 10
    3本足の「親友」を優しく見守る姿が泣ける!ラブラ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中