最新記事

ウクライナ戦争

日露戦争に並ぶ屈辱...ロシア国営TV、へルソン撤退に「歴史的敗戦」引用し悲壮ムード

Russian TV Compares Kherson Retreat to Worst Military Defeats in History

2022年11月12日(土)13時22分
ブレンダン・コール
キーウ市民

ロシア軍のへルソン撤退を祝う首都キーウ市民(11月11日) Murad Sezer-Reuters

<普段は威勢よくロシア政府のプロパガンダをまき散らす国営放送だが、へルソン撤退のニュースは重苦しく暗いムードで伝えられた>

ウラジーミル・ソロビヨフは、ロシア政府のプロパガンダ拡散役を担っていることで知られる国営テレビの司会者だ。しかしこのたび、ロシア軍がウクライナ南部のヘルソンから撤退することが決まったと報じた際は、いつもとは打って変わって沈痛な面持ち。ロシア軍の「歴史的敗北」にまで言及する意気消沈ぶりだった。

■【動画】重苦しく暗いムードでへルソン撤退を伝えるソロビヨフと、普段の威勢の良いソロビヨフ

国営テレビ「ロシア1」で放送された番組「イブニング・ウィズ・ウラジーミル・ソロビヨフ」の司会者であるソロビヨフは、11月9日の番組冒頭で、本来ならばアメリカの中間選挙について番組内で議論する予定だったが、ロシア軍によるヘルソン撤退という、より重大な事態が発生したと深刻な面持ちで説明。その後、ロシア軍の部隊をドニプロ川西岸帯域から撤退させると発表したセルゲイ・ショイグ国防相の映像を紹介した。

ショイグはヘルソン撤退について、ウクライナ軍事侵攻の指揮を執っているセルゲイ・スロビキン総司令官の提言を受けて決断を下したと説明し、撤退の理由については「兵士たちの命とロシア軍の戦闘能力を守るため」だと述べた。

「我々は日露戦争に負けた」

ソロビヨフは、これは「きわめて勇敢な人物」にしか下すことのできない「非常に困難な決断」だと述べ、ロシアが過去に携わった戦争に言及した。「我々は日露戦争に負けた」と、彼は1905年にロシア帝国が直面した屈辱の敗北を挙げると、「第一次世界大戦にも負けた。大戦のさなかでも革命が起きて、1914年から1918年まで続いた長い戦争に、我々は負けた」と続けた。

この発言の後、パネリストたちによる活発な議論が始まったが、ソロビヨフはそのやり取りを遮って「我々はフィンランドでも敗北しなかったか?」と述べた。これは1939年にソ連軍がフィンランドに侵攻したものの敗北した「冬戦争」のことだ。

そしてソロビヨフは「我々は今、NATOと戦争をしている」と述べ、さらにこう続けた。「NATOがこれほどの規模で我々に立ち向かってくるというのは、明らかに予想外だった」

ソロビヨフは、戦争においては「感情に流されない」ことが重要であると同時に、戦争がいかに「痛みや恐怖を伴うものか」を考えれば「軍の決断を尊重すること」も重要だと主張。「だが戦争には独自の法則がある。我々は兵器を製造している世界経済の50%(を占める国々)を相手にしている」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「停戦は発効」、違反でイラン以上にイスラ

ワールド

ガザの食料「兵器化」、戦争犯罪に該当 国連が主張

ワールド

ドイツ、25年度予算案を閣議了承 投資と利払い急増

ビジネス

独IFO業況指数、6月は予想以上に上昇 景気底入れ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 6
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 7
    EU、医療機器入札から中国企業を排除へ...「国際調達…
  • 8
    細道しか歩かない...10歳ダックスの「こだわり散歩」…
  • 9
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 10
    「水面付近に大群」「1匹でもパニックなのに...」カ…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 10
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中