最新記事

ロシア

「プーチンのシェフ」から欧州議会に「血まみれ」ハンマーの贈り物

2022年11月27日(日)15時00分
佐藤太郎

ワグネルのロゴが刻印されたハンマー Photo via Twitter

<「テレグラム・チャンネル」に投稿された動画に、ワグネルの依頼を受けたスーツ姿の弁護士がバイオリンケースを部屋に運び込み、テーブルの上に置く様子が収められている>

ウクライナに大量の傭兵を送り込んでいるロシアの民間軍事会社ワグネルから、悪趣味な贈り物が欧州議会に届いた。送り主のワグネルのトップは、クレムリン御用達のケータリング会社を経営し「プーチンのシェフ」の異名をもつエフゲニー・プリゴジン氏だ。プリゴジン氏はプーチン大統領に近い新興財閥(オリガルヒ)を率いる1人。

バイオリンケースを開けると「血まみれの」スレッジハンマーが姿を現した。欧州議会が彼らをテロリストと認定する手続きを開始したことへの返報とみられる。英テレグラフ紙(電子版)が報じた。

スレッジハンマーは、ウクライナ兵を殺害する凶器として、ワグネルの非公式なシンボルとなっている。

ソーシャルメディアプラットフォーム「テレグラム」に11月24日にアップされた動画には、ワグネルの依頼を受けたスーツ姿の弁護士がバイオリンケースを部屋に運び込み、テーブルの上に置いている。

バイオリンケースの蓋を開けると、ぴかぴかに磨かれた大きなハンマーが現れる。頭部にはワグネルのロゴが刻印され、柄の部分には血を模した赤いペンキが塗られている。


「プーチンのシェフ」として知られるエフゲニー・プリゴジンは、別の声明で、欧州議会がワグナーをテロリスト集団に指定する予定であることを残念に感じていると述べた

欧州連合(EU)の欧州議会は11月23日、ウクライナ侵攻を続けるロシアを「テロ支援国家」と認定する決議案を賛成多数で可決した直後、議会のウェブサイトにサイバー攻撃を受け、一時接続できなくなった。この攻撃は、ロシアのハッカー集団「キルネット」による犯行であると示唆されている。

プリゴジン氏は、欧州議会の投票が完了する前に、「情報」として「血まみれの」スレッジハンマーを欧州議会議員に送りたいと考えていたという。

プリゴジン氏は、ケータリング会社を経営しクレムリンにサービスを提供してきた。20年前に米国大統領としてモスクワを訪れたジョージ・ブッシュ元大統領と一緒にクレムリンで写真を撮られたことから、「プーチンのシェフ」というニックネームで呼ばれるようになった.

ロシアのSNSテレグラムのうち、複数の有名どころのアカウントが、このスレッジハンマーの動画についてコメントした。

「"馬の頭 "の代わりに "ハンマー"。ゴッドファーザーゲームをサンクトペテルブルクの発音で」 ──モスクワの社交界でタレントとして活躍し、今年横領の疑いをかけられてロシアを逃れたリベラルジャーナリストで元大統領候補のクセニア・ソブチャクは、140万人のチャンネルリスナーに向けてこう言った。

ワグネルの傭兵の非人道的振る舞いは周知だろう。今月ワグネルは、ウクライナでの戦闘員として雇った55歳のエフゲニー・ヌジンが、後にウクライナ側に寝返ったとして激怒。傭兵の1人がヌジンの頭を叩き割る動画を「復讐のハンマー」というタイトルで投稿した。プリゴジン氏は11月17日までに、この映像を称賛する発言を示した

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アストラゼネカ、30年までに売上高800億ドル 2

ビジネス

正のインフレ率での賃金・物価上昇、政策余地広がる=

ビジネス

IMF、英国の総選挙前減税に警鐘 成長予想は引き上

ワールド

シンガポール航空機かバンコクに緊急着陸、乱気流で乗
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 9

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中