最新記事

米中首脳会談

米中首脳が最も議論すべきは台湾でもロシアでもなくゼロコロナだった

Biden, Xi Ignore One of Biggest Threats to U.S. Economy

2022年11月15日(火)19時46分
キャサリン・ファン

対面では初めての首脳会談で、中国はコロナを何とかしろとバイデンは言うはずだったが G20Kevin Lamarque-REUTERS

<世界が普段の生活に戻りつつあるなか、中国はゼロコロナ政策から脱しきれず、世界経済の足を大きく引っ張っている。習近平は効かない国産ワクチンとメンツを捨てて、アメリカのワクチンを使えと言うべきだった>

アメリカのジョー・バイデン大統領と中国の習近平国家主席が初めて対面会談し、世界で最も重要な二国間関係が日増しに敵対的になっている現状を改善することを約束した。

2人は台湾を巡る緊張やウクライナ戦争、気候変動について話し合ったが、新型コロナウイルス感染症についての言及はなかった。中国のゼロコロナ政策が、世界経済に深刻な打撃を与え続けているにもかかわらずだ。

バイデンと習は11月14日、インドネシアのバリ島で開催されているG20サミットの会場で、3時間にわたって会談した。新型コロナウイルスの流行を理由に、中国政府が厳格なロックダウンと渡航制限を行ったため、これまでは習自身も海外渡航を厳しく制限してきた。

世界の多くがこれまでの生活を取り戻しつつあるなか、中国政府は依然として厳格な感染対策を続けている。その結果、世界経済の成長は脅かされ、サプライチェーンにも負担がかかっている。11月の第2週にはようやく一部の感染対策が緩和されたが、その後再び感染者が増加したため、再び規制が強化されるのではないかという懸念が広がっている。

中国は「不確実性の源」

ジャネット・イエレン米財務長官は14日、中国に対し、より効果的なワクチンプログラムを採用するよう要請した。米国製のmRNAワクチンを受け入れれば、中国は感染拡大と景気後退を回避でき、世界中に影響が波及するのを防ぐことができるかもしれないためだ。中国はこれまで、国産ワクチンでは効果が弱いことを知りつつ、外国製ワクチンの輸入を拒んできた。

イエレンはG20サミットの会場で、報道陣に対し、米国は中国に「協力する用意がある」としたうえで、「中国自身のためにも、全世界のためにも、パンデミックに効果的に対処できるようになってほしい」と言った。

米連邦議会予算局の元局長で、アメリカン・アクション・ネットワークを率いる経済学者ダグ・ホルツ=イーキンは本誌に対し、中国がより効果的なワクチン施策を展開せず、大規模な検疫やロックダウンに頼っていることを考えると、イエレンの懸念は見当違いではないと言う。

ホルツ=イーキンによれば、新型コロナウイルスに対する中国のアプローチは、「巨大な不確実性の源」になっているという。自国の経済を減速させ、米国経済も道連れにするだけでなく、サプライチェーンに新たなひずみを生み、生産コストを大幅に上昇させているためだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA

ビジネス

根強いインフレ、金融安定への主要リスク=FRB半期

ビジネス

英インフレ、今後3年間で目標2%に向け推移=ラムス

ビジネス

米国株式市場=S&Pとナスダック下落、ネットフリッ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 6

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中