最新記事

イラン

きっかけは1人の女性の死。今回のイラン抗議デモがこれまでと違うのはなぜか

Iran’s People Power Moment

2022年10月3日(月)16時45分
メアリー・ハリス(スレート誌)

現在でいうと、アリ・ハメネイが最高指導者として最大の決定権を持つから、誰が大統領になろうと大きな違いはない。

ただ、ライシには特別な問題がある。イランの歴代大統領に人権擁護者は一人もいなかったが、ライシは人権を擁護しないどころか、1988年に数千人の政治囚の処刑を決定した当事者とみられているのだ。

だから彼が大統領の座に就き、欧米メディアの取材に応えたりして、まともな人物として扱われているのは驚愕すべきことだ。文字どおり人殺しなのだから。

――当局が今回の抗議行動も厳しく弾圧するのは不可避と思われるが、イランの人々を助け、イラン政府の責任を追及するためには、私たちは何をすればいいのか。

現在、インターネットへの接続が完全に遮断されるのではないかという懸念がある。

2019年11月に大規模な反体制デモが起きたとき、インターネットが2週間遮断された地方もあった。そこで起きている残虐行為の動画が世間に流出しないようにするためだ。

同じような接続遮断がいま起きており、懸念が高まっている。多くの人が撮影動画を持ち込む市民ジャーナリスト団体や人権擁護団体からも、こうした動画の提供ペースが落ちているという報告がある。

シリアやミャンマー、そして現在ウクライナの戦争犯罪について調査が行われているように、イランで起きている人権侵害についても、国連の枠組みの中であれ外であれ、公平な独立機関による調査が行われる必要がある。

そうすれば、今すぐでなくても、いずれイラン当局の責任を問うことができる。

全世界が今、イランの人々を応援するべきだ。勝利するのは人民なのだから。

©2022 The Slate Group

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる

ワールド

韓国最高裁、李在明氏の無罪判決破棄 大統領選出馬資

ワールド

マスク氏、FRBへDOGEチーム派遣を検討=報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中