最新記事

日韓関係

紆余曲折の末に行われた岸田首相と韓国・尹大統領の対話

2022年9月26日(月)17時30分
佐々木和義

国連本部を訪れた韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領 REUTERS/Brendan McDermid

<岸田文雄首相と韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領はニューヨークで9月21日、約30分間対話した。日韓首脳会談は2年9か月間、行われていない......>

国連総会に出席するため米ニューヨークを訪れた岸田文雄首相と韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は現地時間9月21日午後0時25分(日本時間9月22日午前1時25分)から約30分間、対話した。

日韓首脳会談は2019年12月に安倍晋三元首相と文在寅前大統領が中国・成都で行って以来、2年9か月間、行われていない。

韓国政府は主題を決めずに行った略式会談と発表、日本政府は懇談の位置づけだが、松野博一官房長は会談と懇談の厳密な定義はないと説明する。

今回の対話を巡っては、韓国政府が国連総会に合わせて日韓首脳会談と米韓首脳会談が行われると発表したが、日本政府が不快感を示して否定した。また、米韓首脳会談は行われず、尹大統領とバイデン大統領が48秒間、立ち話をしただけだった。

再び韓国政府のフライング発表も

岸田首相と尹大統領は、日韓協力と日米韓協力の推進や北朝鮮対応における連携、外交当局や首脳間の意思疎通を継続し、日韓関係を未来志向で発展させることで合意した。

日韓両国に横たわる諸問題の解決に向けた議題はなく、対話継続を確認したに過ぎないが、文在寅前政権下で日本政府が対話を拒絶し続けたことを考えると、韓国にとって一歩前進したといえるだろう。

今回の対話は紆余曲折の末、行われた。9月15日、韓国大統領室は、米ニューヨークで開かれる第77回国連総会に合わせて日韓首脳会談と米韓首脳会談を行うことで両国と合意したと発表した。

聯合ニュースは速報で伝え、中央日報も「韓日首脳会談、33か月ぶり開催」と報じるなど、韓国メディアは一面で取り上げた。

一方、日本政府は松野博一官房長官が、15日午後の定例会見で、岸田首相がニューヨークを訪問する具体的な日程は何も決まっていないと述べて首脳会談を否定した。

日本メディアが日韓首脳会談は不透明だと報じたが、韓国大統領室は18日、「尹錫悦大統領と岸田文雄首相の会談時間と場所は調整を終えた状況」で、議題などの調整が残っていると説明した。

大統領室はまた、尹大統領の英国、米国、カナダの歴訪日程をSNSに掲載したが、20日(現地時間)「韓日首脳会談」と記載されていた。日本政府が事実と異なると抗議し、朝日新聞が「岸田首相が、韓国が首脳会談を一方的に発表したことに対して『それなら会わない』と不快感を示した」と報じて大統領室は投稿を削除した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7外相、イスラエルとイランの対立拡大回避に努力=

ワールド

G7外相、ロシア凍結資産活用へ検討継続 ウクライナ

ビジネス

日銀4月会合、物価見通し引き上げへ 政策金利は据え

ワールド

アラスカでの石油・ガス開発、バイデン政権が制限 地
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中