最新記事

韓国

韓国観光業の復活も日本政府が鍵を握っている

2022年9月21日(水)18時16分
佐々木和義

韓国は8月から期間限定で観光ビザを免除

日本政府は早ければ10月にはビザ免除を再開したい考えだが、韓国は8月から期間限定で観光ビザを免除している。

ソウル市は8月3日、同月31日まで日本、台湾、マカオからの入国者のビザを免除すると発表した。大規模な観光イベントを控えたソウル市が、文化体育観光部、法務部、外交部など関係官庁と協議したという。8月31日には文化体育観光部がビザ免除を10月31日まで延長すると発表した。

ビザは韓国内では出入国管理事務所が発給し、国外では領事部や領事館が発給する。出入国は法務部の所管だが、外交部が発表するのが通例で、20年3月の日本人の入国制限も外交部が発表した。8月のビザ免除は自治体に過ぎないソウル市が発表し、延長も管轄外の文化体育観光部が発表した。

ビザ免除は相互主義が通例だ。日本が韓国人に対するビザを免除するなら韓国も日本人の入国ビザを免除する。しかし、日本は韓国が求めたビザ免除に一切、応じようとはしなかった。

韓国は6月1日から観光ビザの発給を開始したが、駐日韓国領事館にビザを求める人々が殺到し、申請受付けから発給まで1か月近くかかるなど、発給業務に支障が出ていた。

8月は多くの日本人観光客が期待できる上、領事館業務の緩和はビザ免除が有効だが、日本政府がビザ免除に応じない状況下で、一方的なビザ免除を行うと弱腰という批判が出かねない。

そこで、8月はソウル市の要請を受けた暫定措置、9月と10月はソウル市や釜山市と観光当局の要請を受けた暫定措置という口実を作るため、権限を持たない自治体や観光当局が発表したと考えられる。

日韓いずれも相手国への印象が好転

韓国の民間シンクタンク東アジア研究院(EAI)と日本の非営利シンクタンク言論NPOは9月1日、「2022日韓国民相互認識調査」報告書を発表した。

日本に好印象を持つ韓国人は昨年の20.5%から30.6%に上昇し、良くない印象を持つ人は63.2%から52.8%へと大幅に減少した。また、日本人の観光に対する好感度も昨年の25.4%から30.4%へとわずかながら上昇し、良くない印象を持つ人も48.8%から40.3%に大幅に減少した。日韓いずれも相手国への印象が1年前と比べて好転している。

日本政府が観光ビザを免除すれば、韓国も公式にビザを免除するだろう。日本観光業のみならず、韓国観光業の復活も日本政府が鍵を握っているといえそうだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指

ビジネス

米マスターカード、1─3月期増収確保 トランプ関税

ワールド

イラン産石油購入者に「二次的制裁」、トランプ氏が警

ワールド

トランプ氏、2日に26年度予算公表=報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中