最新記事

ウクライナ

ひそかに家を売り...クリミアからロシア人が逃げ出しはじめた

Russians Secretly Selling Crimea Homes as Counteroffensive Looms: Ukraine

2022年9月14日(水)15時34分
トーマス・キカ

2014年、プーチンの写真を手にロシアによる併合を祝ったクリミアの女性 Shamil Zhumatov-REUTERS

<ウクライナ軍の反転攻勢を見て次はクリミアの番だと恐れたロシア人は、慌てて家族を逃そうとしている>

ロシアが併合した南部クリミア半島を、ウクライナ軍がまもなく反攻の標的にするという報道を受け、ロシア系住民は逃げ出しはじめている。

ウクライナ南部から黒海に突き出たクリミア半島は、ウクライナとの長年の紛争のあげく、2014年にロシアに併合された。ウクライナはそれ以来、併合を強く非難しており、ほとんどの国が今も同地域をウクライナ領と認めている。

ウクライナ軍は9月8日、北東部ハルキウの重要戦略拠点からロシア軍を追い出し、領土奪還に成功した。ウクライナ軍指導者たちはさらにクリミア半島奪還を目指し、同様の作戦を遂行するとほのめかしている。

ウクライナ国防省の13日の報告によれば、ロシア政府はクリミアのロシア系住民に安全を確約したものの、クリミア自治政府の指導者たちは家族をこの地域から脱出させようとし始めたという。

ウクライナ語で書かれたこの報告書によれば、「ウクライナを防衛する軍事作戦の成功によって、一時的にロシアが占領してきたクリミア及びウクライナ南部のいわゆる自治政府は、ロシア連邦の領土に家族を緊急に移転させざるをえなくなっている」

「半島に滞在するのは安全だと当局が保証しているにもかかわらず、クリミアを占領する行政機関の代表者やロシア連邦保安庁(FSB)職員、ロシア軍部隊の司令官たちは、ひそかに家を売り、親族を半島から緊急避難させようとしている」

脱出阻止と情報統制

報告書によると、クリミア自治政府は、民間人が家を売ったり、地域外に旅行したりすることを禁止しようとしている。また、ウクライナ軍の反転攻勢に関する情報も厳しく規制されているという。

「またウクライナを占領する当局は住宅の売買に関する契約の締結を禁止し、ロシア本土とクリミアを結ぶクリミア大橋の通過に制限を設け、ウクライナ軍の反撃に関する情報へのアクセスをあらゆる手段で遮断しようとしている」と報告書は締めくくる。「ウクライナの民間人に対して戦争犯罪を犯した者はみな捕らえられ、訴追されると、ウクライナ軍は脅している」

本誌はロシア当局にコメントを求めている。ウクライナ政府による報告の内容は、他の媒体で確認することができなかった。

7日に報じられた記事で、ウクライナ軍のバレリー・ザルジニー総司令官とウクライナ国会のミハイロ・ザブロツキー議員は、クリミアはウクライナ軍による2023年の反撃の主要ターゲットになるだろうと述べた。

「2023年の作戦を転機と考えるなら、ロシア連邦がこの戦争で最重視するものは何かという原点に立ち返って検討する必要がある」と、ザルジニーとザブロツキーは書いている。「ロシアにとって最も重要なのがクリミア半島の支配と定義されるならば、2023年に半島の支配を奪還することは、理にかなっている」

ニューズウィーク日本版 「外国人問題」徹底研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年1月27号(1月20日発売)は「『外国人問題』徹底研究」特集。「外国人問題」は事実か錯覚か。移民/不動産/留学生/観光客/参政権/社会保障/治安――7つの争点を国際比較で大激論

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送中国GDP伸び率、第4四半期は3年ぶり低水準 

ワールド

イスラエル、「ガザ執行委員会」の構成に反発 米国に

ワールド

トランプ氏、グリーンランド領有再主張 「ロシアの脅

ワールド

中国の人口、4年連続で減少 25年出生率は過去最低
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 2
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 3
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」も子に受け継がれ、体質や発症リスクに影響 群馬大グループが発表
  • 4
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 5
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    「リラックス」は体を壊す...ケガを防ぐ「しなやかな…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中