最新記事

中国経済

中国経済にとってコロナ規制が「続けるも地獄・やめるも地獄」な理由

China’s Lockdown Stagnation

2022年9月13日(火)19時14分
ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌副編集長)
海南省ロックダウン

ロックダウン下の集合住宅に食事を配達する業者(海南省三亜市) CHINA DAILYーREUTERS

<共産党政権が堅持する「ゼロコロナ」政策のせいで繰り返される厳格すぎる規制。だが人々が萎縮し、需要が縮小する理由はほかにもある>

新型コロナウイルスの新たな感染拡大で中国の長期にわたるゼロコロナ政策が試されるなか、中国全土にまたロックダウン(都市封鎖)の波が広がっている。

中国の感染状況は(他の国々に比べれば)小規模で比較的抑制できていた。それでも今回、四川省成都や広東省深圳を含む主要都市で約3億人以上が封鎖下に置かれ、中国経済の先行きには暗雲が立ち込めている。

年内に政府がゼロコロナ政策を撤廃する可能性は低い。習近平(シー・チンピン)国家主席が直接指揮を執っているのは明白で、規制緩和後に大規模な感染拡大が起ころうものなら、多くの地方政府関係者のキャリアが脅かされる。

コロナ制御に当たる体制には何百万人もが従事し、それ自体が自律的に動いている。その解体は至難の業だが、とはいえこれも、中国経済と政治を停滞させている一連の政策のほんの一部にすぎない。

ゼロコロナ政策の撤廃は新たな問題を生むだけだろう。中国が大多数の先進諸国のようなポストコロナの段階に一足飛びに移行することは不可能だ。これらの国々ではワクチンの普及や感染による集団免疫獲得、規制疲れの世論や医療体制の改善などによって、コロナは「管理可能な問題」と見なされつつある。だが中国では、規制撤廃が医療崩壊を招くことになりかねない。

ワクチン効果は弱く集団免疫もなし

中国のワクチン供給量は十分だが、効果はmRNAワクチンに比べて弱い。当初の武漢以来、深刻な感染爆発も経験していないため、集団免疫も獲得できていない。今年3月に鉄壁を破って香港で感染が広がり、死亡率が世界最悪に達した際には、当局者はさぞ気をもんだことだろう。

今年になって果てしなく繰り返されるロックダウンは、もはや中国の風物詩となった。封鎖解除後も、街に自由や消費が戻る気配はない。代わりに人々は次の感染拡大に備えて警戒を続ける。需要は縮み、人々は国内旅行にも及び腰だ。

その間にも、規制継続の金銭的、人的負担は地方政府に重くのしかかる。故郷から遠く離れた土地で突然隔離されるのではないかという恐怖は出稼ぎ労働者たちに蔓延し、彼らの送金減少で地方政府の財源は縮小するばかりだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

MUFG、印ノンバンクに40億ドル以上出資へ=関係

ワールド

訪日客11月は10.4%増、紅葉で好調続く 中国は

ビジネス

日経平均は反発、米雇用統計通過で安心感 AI関連も

ワールド

ブラジル中銀、金利据え置き戦略は適切と現時点で結論
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中