最新記事

イラン

世界中に刺客を放つイランの反体制派襲撃を止めろ

The Reeling Iranian Regime

2022年8月16日(火)13時45分
ストルアン・スティーブンソン(元欧州議会議員)

最近アメリカで襲撃された小説家サルマン・ラシュディは、イラン最高指導者だった故ホメイニ師からイスラム教を冒瀆した罪で死刑宣告されていた(写真は2015年) Ralph Orlowski-REUTERS

<イラン革命以来、今が最も弱体化しているといえるイラン指導部は、反体制派に対してまずます危険な存在になっている>

イランの現体制は1979年の革命以来、今が最も弱体化している。捨て身で襲いかかってくる手負いのクマのようなものだ。

経済はボロボロ、ベルギーとスウェーデンの裁判所ではそれぞれ、工作員がテロや人道に反する罪で長期の懲役刑を言い渡された。現体制の中心にいるイスラム法学者たちの足下は大いに揺らいでいる。

イランの反体制派組織モジャーヘディーネ・ハルグ(MEK)は勢力を拡大し続け、イラン各地の都市で抵抗運動の担い手が育っている。最高指導者アリ・ハメネイ師や「テヘランの虐殺者」の異名を取るイブラヒム・ライシ大統領にとっては大きな頭痛の種だ。

MEKが7月下旬に、欧州唯一のイスラム教国アルバニアにある亡命拠点「アシュラフ3」で集会を行おうとしたときは、ハメネイとライシはそこに大規模な攻撃を仕掛けるべく、情報省の腕利きの殺し屋と、イラン革命防衛隊の特殊部隊であるクッズ部隊のテロリストを送り込んだ。

幸いにして、アルバニアやアメリカなど各国の情報当局が襲撃計画に関する暗号メッセージを複数傍受。アルバニア政府はMEKに対し、安全面から集会を延期するよう勧告した。

「イラン大使館」がテロ計画に関与

イランから送り込まれた工作員のうち4人はアルバニアの首都ティラナの国際空港で足止めされ、全員が国外追放処分となった。7月にはこれに先駆け、アルバニア当局がイラン情報省の工作員11人のアジトを摘発、コンピューターや携帯電話などを押収する事件もあった。

アルバニアでは2018年12月にも。イラン大使と一等書記官が国外追放処分となっている。彼らはイラン大使館内部で爆弾テロを計画した容疑により、国家の安全を脅かす人物としてブラックリストに載った。このうちの1つが、2018年3月のMEKの新年イベントを狙った爆破テロ計画だが失敗に終わっている。

2018年6月にパリで開かれたイランの反体制勢力の大規模集会を狙ったテロでは、イランの外交官1人と3人の共犯者がベルギーで禁錮20年の判決を受けた。警察がこの外交官の車を捜索したところ、イラン情報省の工作員と傭兵289人の名前と連絡先が記録されたノートが見つかった。その中にはイランからの難民として公式に認められた人物が数多く含まれており、144人はドイツに住んでいた。

アルバニアでの集会襲撃に失敗したイラン当局は、昔ながらの挙に出た。反体制派への中傷作戦だ。イラン情報省は欧米に子飼いのジャーナリストやロビイストを確保していて、ことあるごとにMEKがあたかも悪の組織であるかのように非難する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米政府機関の一部が閉鎖、短期間の公算 予算案の下院

ビジネス

中国1月製造業PMIが50割れ、非製造業は22年1

ワールド

トランプ氏、労働統計局長にベテランエコノミスト指名

ワールド

焦点:トランプ政権、気候変動の「人為的要因」削除 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 2
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 5
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 6
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 7
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 8
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中