最新記事

香港

「国際金融センター」から「戦争ハブ」へ──「台湾侵攻の拠点化」する香港

FROM ECONOMIC TO MILITARY?

2022年7月26日(火)13時53分
練乙錚(リアン・イーゼン、経済学者)

戦争で重要なロジスティクス面でも、香港は極めて効率的な鉄道・トラック輸送網で中国各地と緊密に連結している。標準規格の20フィートコンテナを利用すれば、物資の「ステルス輸送」は簡単だ。香港の20フィートコンテナ取扱量は1日6万個以上。中国国内のいずれの軍事基地も上回る。

さらに重要なことに、既に香港には人民解放軍部隊駐屯地が20カ所存在し、兵士計1万2000人が駐留している。短期的には、この10倍規模に増員しても問題なく受け入れられる。住民の移住で空き家になった住宅に収容すればいいからだ。中国政府は香港で、集合住宅や1棟単位での建物の購入を猛烈に推し進めている。

ただし、台湾侵攻用の軍事プラットフォームは、政治的に100%安定していなければならない。香港の場合、それを実現する手段はただ一つ。望ましくない市民を移住や服従に追い込み、残った者は拘束して、大規模な「政治的浄化」を行うことだ。

国際的な金融センターを「戦争ハブ」に変える戦略には、戦いの際は敵を欺いていいとの軍事哲学を持つ中国ならではの意外性がある。台湾とその友好国は危険なだまし討ちの可能性を無視してはならない。

PSC_Yizheng_Lian_profi.jpg練乙錚(リアン・イーゼン)
YIZHENG LIAN
香港生まれ。米ミネソタ大学経済学博士。香港科学技術大学などで教え、1998年香港特別行政区政府の政策顧問に就任するが、民主化運動の支持を理由に解雇。経済紙「信報」編集長を経て2010年から日本に住む。

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

モルガンSが北海ブレント価格予想引き上げ、OPEC

ビジネス

スターバックス、中国事業経営権を博裕資本に売却へ 

ワールド

ペルー、メキシコとの国交断絶表明 元首相の亡命手続

ワールド

中国、日本など45カ国のビザ免除措置を来年末まで延
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中