最新記事

テクノロジー

壁を透視できる機器がイスラエルで開発される 軍・警察などで採用へ

2022年7月14日(木)16時50分
青葉やまと

<壁に機器を押し当てると、部屋のなかの人々が画面上に映像化される>

イスラエルの軍用画像処理企業が、壁の向こうを透視する機器「Xaver 1000(クサーヴァ 1000)」を開発した。レーダーとAI画像処理技術により、壁の向こうの物体を3D映像で表示する。

製品は壁の外側に設置したパネルからレーダーを照射し、建物のなかにいる人やモノを点の集まりで表示するしくみだ。鮮明な画像を得られるわけではないが、例えば人の場合は人数と背丈、部屋のどの位置にいるかや、移動パターンなどがわかる。

また、シルエット状の映像から、おおよその体勢を把握することも可能だ。歩き回っているのか、寝ているのか、または武器を構えているのかなどをリアルタイムの映像で確認できる。

レーダーで壁の向こうを探索する技術はこれまでにも存在したが、ごく粗い情報しか得ることができない問題があった。Xaver 1000はレーダーの探索結果を独自のAIと追跡アルゴリズムで処理し、人間のシルエットがおおよそわかるレベルの精密な画像に変換する。

機器はイスラエルの大手画像処理メーカーであり、軍用透視技術のXaverシリーズを主力製品としているCamero-Tech(カメロ・テック)社が開発した。同社はこれまで、建物内の人物までの距離のみを取得できる簡易版のXaver 100などを販売している。今年6月にパリで開催された防衛博覧会「ユーロサトリ 2022」において、上位版となる同1000を発表した。

空想の技術が現実に

建物内のようすをスキャンできる同製品は、まるでSF映画のようですらある。軍事ニュースサイトの「ソフリプ」は本製品を取り上げ、「壁の向こうをみるために、今日では複雑な人工知能と画像処理ソフトウェアが使われる。間違いなく、私たちの誰もがSF映画でみたことがある装置が、今では現実のものとなった」と述べている。

製品は1メートル四方に満たない薄い正方形をしており、四方のパネルを展開した状態で壁に押し当てて使用する。レーダーで内部を走査し、人やモノの検出結果をタブレット端末ほどの大きさの画面にリアルタイムで表示するしくみだ。

使用にあたって特別な訓練は必要なく、壁に設置してボタンを押すだけで映像が得られるという。本体サイズは比較的小型となっており、オペレーター1名がいれば素早く設置・運用可能だ。米インサイダー誌によると同社は、「ほとんどの一般的な建材」を透視することができるとしている。

公的機関での使用を想定

Camero-Tech社は製品の主な販路として、公的機関および軍事機関を想定している。捜査当局であれば、立て篭もりが発生した際、犯人と人質の人数や姿勢などを把握可能だ。また、レスキュー隊が使用すれば、がれきの下から生命反応を探るなど人命救助に活用可能だという。このほか同社は、諜報機関による使用を念頭に置いているとしている。

同社のアミール・ビーリCEOは「Xaver 1000は人質の救出などさまざまな局面において、人命救助活動の成功に向けた最適なアプローチを提供します」と述べ、製品の性能に自信を示している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

五輪=CAS、「追悼ヘルメット」のウクライナ選手の

ワールド

米大統領上級顧問、鉄鋼・アルミ関税引き下げ計画を否

ワールド

ドイツ首相、米欧の関係再構築呼びかけ 防衛力強化の

ワールド

OPECプラス8カ国、4月からの増産再開を検討=関
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    毛沢東への回帰? それとも進化? 終身支配へ突き…
  • 8
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 9
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 10
    「賢明な権威主義」は自由主義に勝る? 自由がない…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中