最新記事

新疆ウイグル自治区

強引に泊まり込んで性的虐待...中国「ゼロ・ウイグル政策」は習近平の指示だった

The Decisive Evidence

2022年6月2日(木)17時52分
ボニー・ジラード(調査企業「チャイナ・チャンネル」代表)

このうち2点目として、「脱過激化」が挙げられている。「地下での説教やコーランの学習を断固取り締まる」などで、過激化の「源泉をよく管理した」というのだ。「宗教的過激主義イデオロギーの継承システムを断絶した」とも述べられている。

また、第3のよくできた点として趙は「大衆工作がうまくいった」と指摘する。「『各民族の家族のような団結』と、民族の団結・友情活動を常態化させ、幹部を草の根レベルで送り込み、あらゆる村に足を運ばせた。幹部が訪れたのは全世帯におよび、人心を最大限に結束させた」という。

これは、漢人の「親戚」を何週間も、場合によっては何カ月も自宅に住まわせてやらなければならなかったという、複数のウイグル人の証言を裏付ける内容だ。もちろん招かれざる客は親戚などではないし、同居を断るという選択肢もなかった。そんなことをすれば逮捕され、収容所に送られる恐れがあるのだから。

漢人の「客人」による性的虐待

ウイグル人らの話によると、「客人」はある日突然やって来て、いつ出て行くとも分からず居座る(中国当局は、彼らはウイグル人に「招かれた」のだと主張する)。この客人は、子供を含め恐怖に怯える家族の外出を尾行したり、あれこれ尋問したりする。

多くの場合、この招かれざる客は男性で、ウイグル人女性に性的虐待を働いたことが報告されている。なにしろウイグル人家族は、雨風をしのぐ場所を提供するだけでなく、ベッドまでも客人と共有することを命じられたのだ。

このように収容所送りの恐怖をちらつかせて、言語道断のプライバシーの侵害を働いていたことを考えると、一連の措置が「人心を最大限に結束させた」という高い評価は、いかに趙も、党指導部も、ウイグル弾圧政策の本当の影響を理解できていないかを露呈している。

これまでに分かっている資料や情報を総合すると、中国政府が新疆ウイグル自治区で「ゼロ・ウイグル政策」を取ってきたことは明らかだ。それは、新型コロナウイルス感染症の流行に対して中国政府が執拗に取り続けるゼロコロナ政策と多くの共通点がある。

新型コロナも、ウイグル人のアイデンティティーや文化も、共産党から見れば有害なウイルスが引き起こす病気にほかならない。だから何があっても、ウイグル人の精神や性向、気質、民族性、宗教観を根絶しようとする。中途半端でやめること、ましてや妥協策などあり得ない。彼らが言うところの危険なウイルスに、存続の余地を与えてはならないのだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米財務長官「ブラード氏と良い話し合い」、次期FRB

ワールド

米・カタール、防衛協力強化協定とりまとめ近い ルビ

ビジネス

TikTok巡り19日の首脳会談で最終合意=米財務

ワールド

カタール空爆でイスラエル非難相次ぐ、国連人権理事会
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中