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戦争で夫を奪われ瓦礫のなかで出産する女性...現実と不気味に重なる映画への注目

History Keeps Repeating

2022年5月11日(水)18時50分
サム・アダムズ(スレート誌映画担当)

知られざるロシア市民たちの姿

目玉は未改装の区域で、ロシア人画家ワシリー・カンディンスキーの作品を1枚だけ展示したイベントを、固定カメラで捉えた長いシーンだ。部屋の前で待たされ、少人数ずつ入室するアートファンはたちまち息をのむ。彼らをクギ付けにするのは、壁の絵画ではない。ぴったりしたTシャツの下で筋肉が波打つ、俳優チャニング・テイタムのロシア版のような警備員だ。

非常に笑える場面だが、戦争に反対しなかったのは彼らのようなロシア市民だという事実を考えずにいられない。まるで古い家族写真を見て、前回選挙で誰が誰に投票したかを思い返すような体験だ。

ロシア産のものは映画もマスタードも拒否する風潮のなか、トゥルー/フォルスはこの2作品は「ロシアのオリガルヒや政府」の資金提供を受けていないとの声明を発表し、予定どおり上映した。おかげで2人の監督は戦争を非難し、アメリカ人がほぼ知らないロシアの一面を示す機会を得た。私たちのロシア理解はあまりに乏しく、何をボイコットすべきなのかも判断できない。

同映画祭にはロズニツァも出席するはずだったが、予定をキャンセルした。その思いを語るのは作品だけだ。

©2022 The Slate Group

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