最新記事

経済制裁

NY高級マンション所有者はロシア人だらけだった...オリガルヒの栄華に迫る当局

OLIGARCHS IN NEW YORK

2022年4月20日(水)17時09分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)
NY億万長者通り

セントラルパーク周辺の「ビリオネアズ・ロウ」にロシアマネーが流れ込む GARY HERSHORN/GETTY IMAGES

<ニューヨークの最高級マンションを買いあさってきたオリガルヒたちのマネーロンダリングに米司法当局の手が迫る>

ロシアのウクライナ侵攻は、ウラジーミル・プーチン大統領に近い一部の大金持ち、いわゆる「オリガルヒ(新興財閥)」にスポットライトを当てることになった。

彼らの多くは1990年代初頭のソ連崩壊後、国有資産の民営化を通じて巨万の富を築き上げた。なかには2000年のプーチン大統領誕生に貢献した者もいたが、プーチンはその後、オリガルヒから政治的影響力を奪い去った。

それでも、彼らが経済的繁栄を謳歌することは許した。ロシアがクリミアを併合した14年には欧米諸国の制裁対象になったが、その後もオリガルヒの栄華の日々は続いた。

だがウクライナ侵攻によりプーチン非難の声が巻き起こり、彼の友人の大富豪たちは世界の鼻つまみ者になった。欧米やその他の国々は彼らの銀行口座、豪華ヨット、高級不動産の凍結や差し押さえを宣言。ニューヨークの街や経済にも大きな影響が出そうだ。

以下は本誌にも多数の記事を寄稿しているジャーナリスト、アダム・ピョーレの新著『ニューヨークの新しい王たち(The New Kings of New York)』の抜粋。オリガルヒとニューヨークの深い関わりと当局による追及の経緯が描かれている部分だ。


不動産業界では公然の秘密

00年代末から10年代初めにかけて、ニューヨークのマンハッタン、マイアミ、ロサンゼルスなどの高級住宅市場でオリガルヒの存在感が増していたことは、不動産業界では公然の秘密だった。彼らの多くは人前に出ることを嫌っていたが、その存在はいやでも目についた。

彼らはしばしば自家用ジェット機で空港に降り立ち、ボディーガードやアシスタントやメイドを引き連れ、高級車で街中の高額物件に次々と乗り付けた。目が飛び出るような金額で物件を買いあさったので、その話題が新聞に載ることもあった。

しかし、こうした派手な振る舞いのツケがもうすぐ回ってくるかもしれない。ジョー・バイデン米大統領は3月1日の一般教書演説で、「ロシア人オリガルヒの犯罪を追及し、彼らのヨット、高級マンション、自家用ジェット機を見つけ出して差し押さえる」意向を表明した。

「私は今夜、この暴力的な体制の下で何十億ドルも築いたロシア人オリガルヒと腐敗した指導者に言う。もうここまでだ。不正な手段で得た利得は許さない」

米司法省はその直後、バイデン政権が制裁リストに載せたロシア人の資産を「あらゆる手段を用いて差し押さえる」ための新組織「タスクフォース・クレプトキャプチャー」の創設を発表した。おそらく最初に手を付けるのは、近年アメリカの大都市に次々と出現したタワーマンションの最高級物件の所有者を割り出す作業だろう。

kawatobook20220419-cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス) ニューズウィーク日本版コラムニストの河東哲夫氏が緊急書き下ろし!ロシアを見てきた外交官が、ウクライナ戦争と日本の今後を徹底解説します[4月22日発売]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相「首脳外交の基礎固めになった」、外交日程終

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言

ワールド

再送-カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブル

ワールド

北朝鮮、非核化は「夢物語」と反発 中韓首脳会談控え
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中