最新記事

ネオナチ

マリウポリの戦闘で勲章をもらう親ロ派兵士の腕にネオナチのエンブレム

Pro-Russian Fighter With Nazi Patches Gets Medal for Killing 'Nazis'

2022年4月6日(水)19時41分
ブレンダン・コール

ネオナチらしき兵士に勲章を与えた親ロ派「ドネツク人民共和国」のプシーリン首長 Alexander Ermochenko-REUTERS

<ウクライナ侵攻はネオナチから親ロ派を守るためだとするプーチンの主張と矛盾する動画が、親ロ派トップの投稿で浮上した>

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナの「非ナチ化」を目指していると主張しているが、その主張と現実の乖離を浮き彫りにする疑惑の映像が浮上した。そこでは、ネオナチのエンブレムをつけた親ロシア派の兵士が、マリウポリの戦闘における働きを讃える勲章を授与される様子が捉えられている。


プーチンとロシア政府は、ウクライナへの軍事侵攻を正当化するためのプロパガンダとして、キーウに本拠を置くウクライナの現政権はナチスが牛耳っているとの主張を展開している。ユダヤ系であるウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も国際社会も、事実に反する主張だと退けている。

ユーザー作成型ニュース配信サービス「ストーリーフル(Storyful)」で共有された動画には、ネオナチのエンブレムをつけた兵士が、「聖ゲオルギー2等勲章」を受け取っている姿が映っている。この兵士は、「ソマリア」自動車化狙撃大隊所属のロマン・ヴォロビヨフ少尉だとされている。

ヴォロビヨフは4月3日に勲章を授与されたが、その際に着用していたジャケットの右腕には、2つのエンブレムが見える。勲章を授与したのは、プーチンの支持を受け、一方的にウクライナからの独立を宣言したドネツク人民共和国の首長を務めるデニス・プシーリン。自身のテレグラム・チャンネルに、自分が勲章を授与する模様を収めた動画を投稿したのもプシーリンだ。

プシーリンはロシアのウクライナに侵攻にも軍を動員して参戦し、4月1日にはウクライナ南東部のマリウポリを掌握したと宣言した。映像の勲章も、マリウポリで「特に高い戦果を上げた」戦闘員に授与されたとプシーリンは言う。

だが問題のエンブレムの1つは、「髑髏(ドクロ)師団」とも呼ばれる、ナチスドイツの武装親衛隊の精鋭部隊、第3SS装甲師団「トーテンコップ」が用いていた、交差した骨の上に髑髏を描いた師団章を改変したもの。もう1つは、ヴァルクナット(別名「ヴァルハラの結び目」)と呼ばれる、複数の三角形を組み合わせたシンボルだ。北欧神話に起源を持つマークだが、現在はネオナチに好んで使われている。

殺した相手はすべてナチ?

「ソマリア」大隊を率いるティムール・クリルキン中佐は、「ドネツク人民共和国の英雄」勲章を授与された。プーシリンの記述によると、クリルキンが率いた部隊は、住宅地で敵軍からの激しい攻撃にさらされたが、45の部隊および「250人以上のナチ」をせん滅したという。

クリルキンは、撮影しているカメラに向かって、「われわれはマリウポリから、ファシストの爬虫類どもを一掃することに全力を傾けている」と語り、マリウポリの街は「我々にとってすべて」であり、「任務を最後まで遂行する」などと語った。

ゼレンスキーは3月、「キーウに本拠を置くウクライナの現政権はネオナチだらけだ」とするプーチンの「ばかげた」主張について、プーチンが「身の毛もよだつような残虐行為に出るおそれがある。これは、彼が真剣であることを意味する発言だからだ」と警告した。

「プーチンが我が国にネオナチの兆候を読み取っているのだとしたら、他にどんな陰謀を仕掛けてくるのか懸念せざるをえない」とも語っていた。

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

タイ首相、議会解散表明 45─60日以内に総選挙

ワールド

トランプ氏、州レベルのAI法抑制へ大統領令

ビジネス

午前の日経平均は反発、TOPIX高値更新 景気敏感

ワールド

原油先物上昇、米・ベネズエラの緊張受け 週間では下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれなかった「ビートルズ」のメンバーは?
  • 3
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキャリアアップの道
  • 4
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 5
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナ…
  • 8
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 9
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎…
  • 10
    ピットブルが乳児を襲う現場を警官が目撃...犠牲にな…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中