最新記事

インドネシア

女子生徒13人をレイプし妊娠させた教師に死刑判決

2022年4月6日(水)11時55分
佐藤太郎

ヘリー・ウィラワン KOMPASTV-YouTube

<被害者のある親族は「我々は当初、終身刑と化学的去勢による処罰を望み、彼が自分の犯罪による痛みを味わわせられるようにしたかったが、死刑は正義だと思う」>

インドネシアで3月5日、西ジャワ州の州都バンドンにあるイスラム寄宿学校の生徒13人をレイプし、少なくとも8人を妊娠させたとして有罪判決を受けた元教師に死刑が宣告された。

昨年発覚した、インドネシア人の元教師ヘリー・ウィラワン(36歳)による少女13人へのレイプ事件。昨年5月に被害者の1人の両親が自分の娘が妊娠していることに気付き、2016年以来続いていた数々の蛮行が明らかになった。

被害者はまだ子どもの11〜16歳の少女で多くは貧しい家庭の出身で奨学金をもらい通学している女子生徒だったという。ウィラワンによる強姦で8人が妊娠し、子供が9人生まれている。宗教教師ともあろうウィラワンのおぞましい所業にインドネシア中が揺れた。

凶悪性ゆえに検察側の求刑は、被告の化学的去勢と死刑。被告は、子育てのために子供から離れたくないと言っていた。結局、今年2月にバンドン地方裁判所が下した判決は、終身刑だった。これを不服とした検察側は死刑と化学的去勢を要求し上訴していた。

最後の死刑執行は2016

月曜日に西ジャワ州バンドンの高等裁判所のウェブサイトに掲載された裁判官の声明には、「我々は検察側の控訴を受理する」と書かれていた。

"我々はここに被告を死刑に処する"

この時、ウィラワン被告は上訴のために法廷にいなかったという。

被害者の親族はAFPに対し、月曜日の判決は被害者に正義をもたらしたと語った

被害者の1人の叔父というヒドマト・ディジャヤ氏は、「私たちは当初、彼が罪を犯したことによる痛みを感じてほしいという思いから、終身刑と化学的去勢を望んでいました」「しかし、私たちは死刑判決が正義を表しているとまだ感じています」

ただ、インドネシアは数年間死刑執行が行われていない。最後の既知の死刑執行が2016年に行われて以来は延期されている状態で、ウィラワンへの実際の処遇が気になるところだ。

このレイプ事件は国民的な怒りを呼び起こし、性犯罪に対抗し、夫婦間レイプを含めて被害者に正義を提供することを目指す、「性暴力の排除」に関する法案を承認するよう国会に対する圧力を強めた。

バンドンでのレイプ事件は、インドネシアの教育制度における性的虐待の問題にもスポットライトを当てている。昨年、児童保護委員会に報告された18件のうち14件は、イスラム系の寄宿学校で起きている。同国には2万5,000以上のイスラム寄宿学校があり、500万人近い生徒が寮で暮らしながら勉強している。


<関連記事>
病院の集中治療室にいた4歳の少女を5人で集団レイプ
電車内のレイプを米通勤客は見て見ぬふり それどころかスマホ撮影も

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中