最新記事

ウクライナ情勢

ウクライナ避難民の子どもたちにも春 異国の地で入学、新たな日々がスタート

2022年3月28日(月)17時30分
独ドュッセルドルフの小学校が用意した入学前の準備クラスに通うウクライナからの難民の子供たち

写真は18日、独ドュッセルドルフの小学校が用意した入学前の準備クラスに通うウクライナからの難民の子供たち(2022年 ロイター/Thilo Schmuelgen)

アイルランドの首都ダブリンが「セントパトリックデー」の祝日でにぎわった先週──。酒盛りをする人々に交じり、ほほにウクライナ国旗をペイントした小さなおさげの少女が立っていた。大きすぎる緑色の帽子は、今度入った学校からの贈り物だ。

8歳のバルバラ・コスロフスカさんは、ウクライナを逃れた150万人余りの子どもの1人。1カ月前に始まった戦争は、第2次世界大戦以降で最も急拡大する難民危機を欧州にもたらした。

アイルランドからポーランドに至るまで、各国はクラスの拡大、ウクライナ人教師の登録手続き迅速化、授業内容の翻訳、オンライン授業の提供など、祖国を離れた児童が教育の機会を失わないための取り組みを進めている。

バルバラさんと弟のプラトン君(5歳)、いとこのイワン君(9歳)、イゴール君(7歳)の4人は、ウクライナの首都キエフから長旅を経てアイルランドに到着。その数日後には新しい小学校に通い始めた。

バルバラさんの英語はほんの片言だが、それでも満面の笑顔で堂々とトムソンロイターのオンライン取材に答え、新しい生活について話してくれた。

「女の子全員が私と友達になりたがってくれる。みんなが助けてくれる。プレゼントもいっぱいもらった」。画面越しに掲げて見せるのは、星模様の新しい青いスクールバッグ。校長先生からの贈り物だという。

国連児童基金(ユニセフ)によると、欧州諸国はウクライナ難民の子どもたちを到着後3カ月以内に学校に受け入れると約束している。

ただでさえ少ない予算やクラス規模の大きさ、コロナ禍の影響と格闘している各国の教育制度にとって、難民の受け入れは大がかりな取り組みだ。言語や心理面で専門的な支援を必要とする難民の子どもも多い。

ユニセフは、子どもを素早く学校に復帰させることは、子どもたち自身の成長だけでなく、ウクライナの将来にとっても非常に重要だと指摘する。

ユニセフの広報担当、ジョー・イングリッシュ氏は「学校は短期的には、トラウマを乗り越えるための支えと安定、組織を子どもたちに提供する。長期的には、紛争が終わった時に故郷を建て直すのに必要な知識とスキルを授ける」と説明した。

大きな連帯

ユニセフによると、これまでに360万人余りのウクライナ人が国を脱出しており、うち約半分が子どもだ。ポーランド、ルーマニア、モルドバ、ハンガリーの4カ国に逃れた難民が最も多い。

アイルランドは、ロシアがウクライナに侵攻した2月24日の直後にウクライナ人について査証(ビザ)を免除した。アイルランドに住むウクライナ人は最近まで約5000人だったが、今では倍以上に増えた。

アイルランドは難民の子どもを支えるため、ウクライナ人教師の受け入れを優先している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国国防相、「弱肉強食」による分断回避へ世界的な結

ビジネス

ブラックストーンとTPG、診断機器ホロジック買収に

ビジネス

パナソニック、アノードフリー技術で高容量EV電池の

ワールド

タイ、通貨バーツ高で輸出・観光に逆風の恐れ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中