最新記事

遺跡

マチュピチュ遺跡、実はマチュピチュでなくワイナピチュだった可能性...米研究

2022年3月25日(金)20時42分
アテナ・チャン
マチュピチュ

DavorLovincic-iStock

<1911年に世界に紹介された遺跡は、今ではマチュピチュの名で誰もが知るペルーの名所となっているが、実は違う名前だった可能性が高いとする研究結果が>

私たちは今まで、マチュピチュ(Machu Picchu)を間違った名前で呼んでいたのだろうか? 2人の研究者によれば、正しい名前はワイナピチュ(Huayna Picchu)かもしれない。

ペルーのマチュピチュは、世界で最も知名度の高い遺跡の一つだ。1911年、アメリカの探検家ハイラム・ビンガムによって初めて世界に紹介され、2007年には「新・世界七不思議」に選ばれた。

しかし、米イリノイ大学シカゴ校(UIC)のニュースリリースには、1911年当時、マチュピチュについてわかっていることはあまり多くなかったと書かれている。学術誌「ニャウパ・パチャ:アンデス考古学ジャーナル(Ñawpa Pacha: Journal of Andean Archaeology)」に論文を発表した2人の研究者によれば、長年にわたって知られてきた有名な名前は、もともとの呼び名ですらなかった可能性があるという。

研究チームは、3つの重要な情報源に注目した。ビンガムの調査記録、17世紀の文献、19世紀の地図に記された地名だ。

研究に参加したUICの人類学教授ブライアン・S・バウアーはニュースリリースの中で、「まず、ビンガムが初めて訪れたとき、遺跡の名前は不確かだった。そのため私たちは、ビンガムの訪問前に印刷された地図をいくつか調査した」と説明している。

1904年の地図に記されていた名前

実際、この遺跡をワイナピチュと呼ぶ多くの資料が見つかった。例えば、ビンガムがまだペルーに到着していなかった1904年の地図帳には、ワイナピチュというインカの町がすでに記載されていた。

そしてビンガムも、遺跡調査に出発する前から、すでにワイナピチュという場所について聞かされていた。さらに1912年、ビンガムは地主の息子から、この遺跡がワイナピチュと呼ばれていることを伝えられたとニュースリリースには書かれている。

「極め付けが、16世紀後半の驚くべき記録だ。この地域の先住民が、ワイナピチュと呼んでいた遺跡を取り戻そうとしているという内容だった」とバウアーは続ける。

「これらの結果は一様に、このインカの都市はもともとピチュ、あるいはワイナピチュと呼ばれていた可能性が高いこと、マチュピチュという名前が遺跡と関連づけられたのは、1911年のビンガムによる発表以降であることを示唆している」

しかし、たとえこのような新事実が明らかになったとしても、今や有名なこの名前の変更が優先事項になることはないかもしれない。

ガーディアンによれば、英ケント大学の教授で中南米の歴史を研究するナタリア・ソブレビラは、「すべての名前はつくられたもので、変更可能であり、大きな違いはない。しかし、マチュピチュは今や、ペルーのアイデンティティーと強く結び付いたブランドとして確立されている。それを変更する意味があるだろうか?」と述べている。

「シェークスピアが言う通り、『バラは、どのような名前で呼んでも甘い香りがする』のだ」と、ソブレビラは述べている。
(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

航空連合ワンワールド、インドの提携先を模索=CEO

ワールド

トランプ米政権、電力施設整備の取り組み加速 AI向

ビジネス

日銀、保有ETFの売却開始を決定 金利据え置きには

ワールド

米国、インドへの関税緩和の可能性=印主席経済顧問
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中