最新記事

韓国

韓国大統領選、異例の大接戦をユン・ソギョルが制す 5年ぶり保守政権へ

2022年3月10日(木)14時30分
ユン・ソギョル

9日に投票が行われた韓国大統領選は、保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソギョル)(61)が接戦を制し、当選を確実にした。10日、ソウルで撮影(2022 年 ロイター/Kim Hong-Ji)

9日に投票が行われた韓国大統領選は、保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソギョル)大候補(61)が接戦を制し、当選を確実にした。2017年以来、保守勢力が5年ぶりに政権の座を取り戻した。

10日午前5時30分(日本時間同)現在、開票率約99.8%の段階で、尹氏の得票率は48.6%、与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補は47.8%。10日に正式発表が行われる見通し。

尹氏は汚職の根絶、社会正義の育成、より公平な競争環境の整備などを公約に掲げたほか、対中関係の「リセット」、このところミサイル発射を繰り返す北朝鮮への厳しい対応を模索している。

また、性別や世代間の格差、不平等の拡大、住宅価格の高騰で分断されている国をまとめるという課題にも直面する。

尹氏は勝利演説で、今回の選挙は「偉大な国民の勝利だ」と述べ、野党と協力して結束に取り組むと表明。「競争は終わった。力を合わせて国民と国のために一つにならなければならない」と述べた。

また、支持者との会合で「国民統合」を最優先課題に掲げ、地域や政治・社会経済的な違いにかかわらず、全ての国民が平等に扱われるべきだと主張。「国民の生活に留意し、困っている人に温かい福祉サービスを提供する。そして、わが国が国際社会と自由世界の誇りと責任感のある一員として務めるよう最大限の努力をする」と語った。

今週に入り国内では新型コロナウイルスの新規感染者が急増しているものの、投票率は77%以上に達した。

政治の初心者

尹氏は文在寅(ムン・ジェイン)現大統領に検事総長に任命されたが、政権高官への捜査を巡り文氏と対立した。政治経験はなく、それが欠点とも長所ともみられている。

選挙戦は失言やスキャンダルが注目されたものの、雇用や住宅、富の不平等など文氏の経済政策が主な争点となったことは、野党の尹氏に支持が集まる要因となった。

就任後、直ちに直面するのは北朝鮮を巡る危機とみられる。北朝鮮は2017年以降停止している長距離大陸間弾道ミサイル(ICBM)や核兵器の実験再開の可能性を示唆している。

尹氏は、北朝鮮による相次ぐミサイル活動や最大の貿易相手国である中国との競争に直面する中で、同盟国である米国との関係をさらに緊密化させる考えを表明している。

米ホワイトハウスは尹氏に祝意を示し、同盟強化に向けた緊密な連携をバイデン大統領は楽しみにしていると表明した。

ホワイトハウスはその後、尹氏がバイデン氏と電話で話したと明らかにした。

岸田文雄首相も尹氏が選出されたことに対し、「選出を歓迎したい。心からお祝い申し上げる」と祝意を述べた。日韓国交正常化以降に築いた協力関係を発展させる必要があるとの認識も示し、「関係改善のため新大統領と緊密に協力していく」と語った。都内で記者団に述べた。

新アメリカ安全保障センターのドゥヨン・キム氏は「不動産価格、住宅政策、雇用、税制が最大の国内課題になるだろう」と指摘。また、対外的には「同盟がより円滑に運営され、北朝鮮や中国、地域や世界的な問題でほぼ協調することが期待できる」と述べた。

*内容を追加しました。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・『イカゲーム』の悪夢が世界をここまで虜にする理由
・地面に信号! 斜め上を行く韓国の「スマホゾンビ」対策が話題に
・韓国、保守に政権交代なら核兵器を配備する方針...米国は「関心なし」と専門家


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=

ビジネス

GM、通期利益予想引き下げ 関税の影響最大50億ド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中