最新記事

ドイツ

プーチンの侵略に対抗するため武器供与に転換したドイツ

Germany Finally Turns on Russia as Putin Miscalculates Europe's Anger

2022年2月28日(月)16時53分
カレダ・ラーマン

ウクライナの国旗(右端)と共に立ち、連隊を示すドイツのショルツ首相(2月24日) Markus Schreiber/ REUTERS

<二度の大戦への反省から軍備の増強や武器供与に慎重だったドイツが、ロシアのウクライナ侵攻を目の当たりにして立ち上がった>

ロシアのウクライナ侵攻を受け、ドイツはここ数日、防衛・安全保障政策を大きく転換している。その一環として、オラフ・ショルツ首相は2月27日、ドイツ軍のために1000億ユーロの特別基金を設立することを表明した。

ドイツは、20世紀の二度の大戦や軍国主義に走った過去への反省から、国防費をGDPの2%に引き上げるよう求めるアメリカなどの国々からの圧力に長い間抵抗してきた。

ロイター通信によると、2021年のドイツの国防費は全体で470億ユーロで、GDPの1.5%程度にとどまっていた。

だがショルツは27日午前、ベルリンで開かれた連邦議会の特別会合で、「自由と民主主義を守るため、わが国の安全保障により多くの投資をする必要がある」と述べ、22年度のGDP比2%以上へ引き上げる方針を表明した。

また、ロシアのウクライナ侵攻後、ロシアの天然ガスへの依存を減らすため、液化天然ガス(LNG)ターミナル2基を建設し、天然ガスの備蓄量を増やすことも発表した。

「わが国のエネルギー安定供給を確保するため、さらに努力する」と、ショルツは議会で語った。「特定のエネルギー供給国からの輸入に依存する状態を克服するために、軌道修正しなければならない」

方針転換で武器供与も

CNNのジム・スキアットは、ロシアのウクライナ攻撃は「NATOを強化し、拡大する可能性がある」と同時に、「ヨーロッパのロシアの天然ガスに対する依存度を下げる」ため、この動きは「プーチンの誤算の最も直接的な証拠」だとした。

ウクライナからの武器支援の要請に対して慎重な姿勢をとり、ヘルメット5000個を送って失笑を買ったドイツだが、その点も大きく転換した。国防費大幅増額が発表される前日の26日、ドイツは、対戦車兵器ロケット1000発との携行式地対空ミサイル「スティンガー」500発を「できるだけ早く」ウクライナに供与することを発表した。

「ロシアのウクライナ侵攻が転機だ。これは戦後秩序全体を脅かすものだ」とショルツは声明を出した。「ウラジーミル・プーチンの侵略軍から防衛するために、ウクライナを可能な限り支援することがわれわれの義務である」

「われわれはウクライナ の側に立つ。そして、平和、自由、人権のために勇気を持って立ち上がるロシア人の側にも」

ドイツは戦後長い間、ウクライナを含む紛争地域には殺傷力のある武器を輸出しないという方針を貫いてきた。政府当局者は25日の時点でもこの点に変更はないと述べていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉱物資源協定、ウクライナは米支援に国富削るとメドベ

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道

ワールド

英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中