最新記事

中国

モスクワ便り──ウクライナに関するプーチンの本音

2022年2月14日(月)12時09分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

6.米国の本質は大統領ではなく議会の力がより強いということだと、クレムリンは理解しています。トランプは、ロシアとはうまくやりたいと思っていたし、ロシアも交渉できる相手として期待したのですが、民主党を中心とする議会反露グループの圧力で何もできませんでした。曲がりなりにもバイデンは議会多数派を制していて、かつ、身内から足を引っ張られることもない。

7.米英がここまでウクライナにこだわるのは、ウクライナの現政権が米国の操り人形だからです。この、「完全に米国の操り人形として使える現政権」が倒れると、同国への影響力が大幅に低下するからに他ならないとクレムリンは見ています。米英には、「米英の軍事基地をウクライナに置く長期的な目標」があり、ここでコテンパンにロシア軍にやられてしまうと、あらゆる意味で今までの活動が水泡に帰しかねないので、米英が積極的に介入しようとしているわけです。特に米国にとっては、どこかで紛争があることは良いことで、そうでなかったら、軍産複合体の利益が損なわれますので、第二次世界大戦後を見てもわかるように、米国は必ず世界のどこかで戦争を仕掛けています。戦争がないと、米国は困るのです。

8.なお、米国がウクライナに供与した武器、例えばジャベリンなどは、一時代前のもので、ロシアは戦車戦など考えていないので、ほとんど無意味でしょう。古い武器をウクライナに売却できて、米国は何も損していない。軍事産業が儲かれば、米国全体の経済が潤いますから

「モスクワの友人」の私見

「モスクワの友人」は、このたびわざわざクレムリン関係者と接触して下さった結果引き出した情報以外に、日ごろから培ってきた知見により、以下のような情報を「個人の見解」として提供してくれた。

(1)ロシアはウクライナ側からの攻撃がない限り、武力侵攻することはないと思っています。で、そのウクライナ側からの攻撃もゼレンスキーがそこまでバカではないと思うので、英米にそそのかされても攻撃はしないだろうと思います。クレムリン筋も戦争の可能性はほぼ否定していましたが、もちろん、ウクライナの対応如何でもあると言っていました

(2)ウクライナ危機を煽っているのは明らかに米国ですが、本来の調停者であった独仏がミンスク合意(*注)の履行をウクライナ政府に迫っておらず、ウクライナ政府がこの履行に全く真剣に取り組まなかったことが原因です。だというのに、調停者でもない米国が中心になって武器供与を進めている、ということ自体がおかしいのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ソフトバンクG、オープンAIとの合弁発足 来年から

ビジネス

PayPayの米上場、政府閉鎖で審査止まる ソフト

ワールド

マクロスコープ:高市首相が教育・防衛国債に含み、専

ビジネス

日鉄、今期はUSスチール収益見込まず 下方修正で純
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中