最新記事

航空業界

緊急着陸したパキスタン航空、機長が再離陸を拒否 「シフトは終わった」

2022年2月2日(水)14時26分
青葉やまと

パキスタン国際航空のスポークスパーソンは、アラブ・ニュース紙に対し、「航空会社側が機長にフライトに従事するよう求め、機長がこれを拒否したかのような印象が生じていますが、これは完全に誤りです。ダマームへのダイバートによって(規定の)勤務時間を超過したことから、このパイロットは操縦に当たらなかったのです」と説明している。

相次ぐスキャンダルに不信 過去には3割が偽パイロット

今回の一件ではインディアン・エクスプレス紙に限らず、勤務姿勢を疑う報道が先行した。背景にあるのは、パキスタン航空業界に対する信頼の低下だ。

パキスタンの航空業界をめぐっては2020年、民間パイロットの3割が偽のライセンスで業務に当たっているとして問題になった。米CNNは、代理受験などで不正にライセンスを取得したパイロットが蔓延していると報じた。パキスタン国際航空のスポークスパーソンは、「偽ライセンスはパキスタン国際航空だけの問題ではなく、パキスタンの航空業界全体に広がっていると認識している」と弁明した。

また、パキスタン国際航空では事故が相次いでいる。昨年12月のフライトでは、同じ機が2度連続で出発空港にリターンするインシデントが生じた。1度目の機体の整備が完了すると、こんどは機長が行方不明になっていることが発覚。パキスタンのドーン紙は、機長が姿を消すという「興味深い事態」が生じたと報じている。さらに2度目のリターンとなったことで乗客の怒りは頂点に達した。空港に着くと乗務員にドアを開けさせ、160名のうち140名が3度目の離陸を待たずに降機している。

昨年5月には、雑談に興じていた同社便のパイロットがランディングギアを出し忘れたまま着陸を試み、2名を除く乗客乗員ほぼ全員が死亡という事故に発展している。

1月の離陸拒否の件に限って論じるならば、説明通りであれば機長の英断ともいえそうだ。だが、相次ぐスキャンダルを背景に、同国パイロットへの不信は根強いようだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ラファ攻撃は「人道上の悪夢」、停戦合意に尽力を=国

ワールド

米英豪、ロックビットのロシア人幹部に制裁 ランサム

ビジネス

米金融政策、想定ほど引き締まっていない可能性=ミネ

ビジネス

米当局、テスラに詳細要求 「オートパイロット」リコ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 2

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 6

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 7

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 8

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 9

    ハマス、ガザ休戦案受け入れ イスラエルはラファ攻…

  • 10

    プーチン大統領就任式、EU加盟国の大半が欠席へ …

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中