最新記事

中国

二階元幹事長が最高顧問を務める日中イノベーションセンターと岸田政権の経済安全保障との矛盾

2022年1月4日(火)16時32分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
岸田文雄

「どっちにつこうかな?」、玉虫色の岸田首相 Yoshikazu Tsuno/REUTERS

岸田政権は経済安全保障を強調しているが、自民党の二階元幹事長は2019年に日中イノベーションセンターを設立して中国への情報提供を促進している。日本の対中姿勢は矛盾しており、自公連立政権は親中過ぎて危ない。

二階氏が最高顧問を務める日中イノベーションセンター

2019年3月、日中イノベーションセンター(以後、センター)が設立された。中国の清華大学と日本の中央大学が中心となって、産学連携を通して日中のイノベーション協力を進めていく。

このページの左下にある「センター役員」というところをご覧いただきたい。

そこには「最高顧問」として「二階俊博」という名前がある。

二階氏は2017年に清華大学の名誉教授になっており、イノベーションに貢献するにふさわしい職位に就くなど周到な準備が成されているが、しかし紛れもない大物政治家。当時の肩書は「自民党幹事長」である。政治家として経済界を含めて、日中のイノベーション交流に貢献していくという、日本国丸抱えのような構想だ。

中央大学は二階氏が卒業した大学で、清華大学は習近平が卒業した大学。

この二つの大学を軸にしながら、日本の経団連など企業を中心とした産業だけでなく、大学や研究機関を中心とした研究開発に関して、互いに先端技術開発やイノベーションの情報提供をして協力し合っていこうというのが目的である。

いや、むしろ、「中国に貢献しようというのが真の目的」になっていると言っても過言ではない。

その証拠に、理事長の挨拶で濱田健一郎氏はセンターの役割として「中国の産学研の新しい協力の在り方のためにふさわしい能力が発揮できるように精進してまいります」と書いている。

中国側の姿勢としても、「中国の経済と社会の発展のための奉仕・各級政府への政策の提案を行う」とさえ明記してある。

2019年3月と言えば、当時の安倍首相が国賓として訪中した(2018年10月)ばかりのころだ。国賓として中国に招聘してもらうために、「一帯一路」に関する第三国での協力を交換条件としたほどだ。

ようやく願いが叶った安倍氏は、国賓として招いてくれた見返りに、習近平を国賓として日本に招聘する約束をしてしまった。米中覇権競争が激化している今、それが国際社会に如何にまちがったシグナルを発するかは『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』に書いた通りだ。

センター設立から1ヵ月後の2019年4月24日には、二階氏は習近平に会い、朝貢外交を進めている(参照:2019年4月26日コラム<中国に懐柔された二階幹事長――「一帯一路」に呑みこまれる日本>)。

センターの研究員制度のページには日中の数多くの研究者たちの名前が並んでいるが、日本側に注目してみると、中央大学だけでなく、東京大学や京都大学など、非常に多くの中国人研究者が日本で研究に従事していることが見て取れる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中