最新記事

カザフスタン

ロシア主導軍事同盟、カザフスタンに部隊派遣 抗議デモ参加者2000人以上拘束

2022年1月7日(金)09時30分
カザフスタンのアルマトイ衝突する抗議デモ参加者と治安部隊

中央アジアのカザフスタンの主要都市・アルマトイで1月6日、燃料価格高に端を発する抗議デモの参加者が、再び治安部隊と激しく衝突した。5日撮影。提供写真(2022年 ロイター/Interior Ministry of Kazakhstan)

中央アジアのカザフスタンの主要都市・アルマトイで6日、燃料価格高に端を発する抗議デモの参加者が、再び治安部隊と激しく衝突した。ロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」はデモ鎮圧への支援要請に応じ部隊派遣を決め、ロシアは空挺(くうてい)部隊を送り込んだ。

アルマトイの治安当局によると、5日夜から6日未明にかけ、武力鎮圧によりデモ隊数十人が死亡、2000人以上が拘束された。当局はまた、少なくとも18人の治安部隊員が死亡したとしており、そのうち2人は首が切断されたと発表した。

ロイターの記者によると、アルマトイにある大統領官邸や市庁舎が炎上し、焼け落ちた車両が市内に散乱しているという。

6日夜にはアルマトイの主要な広場で、治安部隊とデモ隊の衝突が再発。タス通信は目撃者の話として、新たな銃撃で死傷者が出たと報じた。ロイターの記者も爆発音や銃声を確認したが、日没後は銃撃が再び止まった。

カザフスタンは旧ソ連からの独立後30年間で最も緊迫した局面を迎えており、ロシアは即座に介入することで石油やウランなどの資源を持つ同国での権益確保を目指すとみられる。

石油メジャーの米シェブロンによると、カザフ最大のテンギス油田は6日に産油量が減少した。一部の請負業者が、デモ支援に向け電車の運行を妨害したからだという。

カザフ全土でインターネットが遮断され、騒動の全容は現時点で明らかになっていない。同国は仮想通貨のマイニング(採掘)が盛んで、ビットコインの採掘にも影響が出た。

<ロシア主導組織は2500人規模の部隊派遣>

トカエフ大統領はCSTOに支援を要請したと明らかにした。情勢混乱は、海外で訓練を受けたテロリストがもたらしたと批判した。

ロシアはカザフスタンの「反テロ作戦」支援について、同国や同盟国と協議すると表明。トカエフ大統領と同様、暴動は外国に触発されたと主張した。

ロシアは、同国軍の派遣部隊の規模を明らかにしていない。

CSTO事務局長はロシア通信に対し、派遣部隊は全体で約2500人になる見通しで、必要ならば増派すると述べた。「数日あるいは数週間」の短期作戦になるとの見解を示した。

米国務省のプライス報道官はCSTOの部隊派遣について、カザフ政府に十分な防衛力があることを踏まえ、正当な招請だったかどうかについて「疑問を持っている」とコメント。人権侵害や外国勢力によるカザフ国内機関掌握の取り組みが起きる可能性に細心の注意を払っていると述べた。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ロシアの部隊が到着後のカザフスタンのようす REUTERS / YouTube

【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、予想

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中