最新記事

中国

中央経済工作会議「習近平重要講話」の「三重圧力」に関する誤解と真相

2021年12月24日(金)18時55分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

2.供給の衝撃(中国語:供給衝撃)

石油石炭など原材料の価格高騰がもたらした衝撃を指している。なお、それを受けて、一部地域で電力使用の制限などの措置を講じたため停電や生産ラインの停滞を招いたが、今後はそのような措置を取らずにエネルギー消費の質を高めてエネルギー源の価格高騰に備えるとしている。

3.期待の低下(中国語:預期転弱)

コロナや国際情勢などにより、投資すればいくらでも儲かり成功するといった市場への期待が弱まっているだけでなく不動産問題などがあるため、融資を受けて起業しようとすることやビジネスを拡張していこうという意欲が減少し、不動産購入リスクを警戒して買い控える傾向にある。これに関しては国家が自己改革を推進するとともに消費者が自信を取り戻すべく構造改革を行っていかなければならない(筆者注:習近平は不動産バブルを警戒しているので抑制を図っているが、それは融資に関する監督強化につながるため、多様な分野における改革が必要とされている)。

習近平は「三重圧力」以外にも多くの現状分析と問題点を指摘して来年への指針とつなげているが、全て書くと長文になるので、ここでは取り敢えず「三重圧力」にのみ対象を絞って説明を試みた。

某氏は「三重圧力」指摘を「習近平政権転覆の可能性」と分析

これに対して某氏が<中国・中央経済工作会議の中身から「習近平体制転覆の可能性」が見えてきた>という分析を発表したらしい。講演依頼者はそれを読んで混乱し、講演では事の真相を解説してほしいと依頼してきた。

筆者は某氏の分析を読んでないし、タイトルを見ただけで、とても読んでみようという気にはなれず、依頼者に「何が書いてあり、どのようなことに混乱したのかを説明してほしい」とお願いしたところ、某氏が書いている以下の点の真相を説明してほしいという返答が来た。

(1)この会議で、中国経済が1)需要の収縮に直面し、2)供給に対する打撃に見舞われ、3)先行きも不透明だという「三重圧力」に直面していると指摘されたことはなぜかほとんど報じられていない。経済は需要と供給からなるわけだが、需要もダメ(需要の収縮)なら供給もダメ(供給に対する打撃)であり、さらに先行きも厳しいということになると、全面的にダメだということにはならないか。これは習近平のメンツが丸潰れとなる強烈な結論であり、中国共産党内部の権力闘争という見地からは看過できない内容となっているのである。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 6
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 7
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 8
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 9
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 7
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 8
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中