最新記事
台湾

民主主義サミットで途切れた映像 オードリー・タンのプレゼン画像は台湾独立を示していた

2021年12月13日(月)17時41分
ロイター
バイデン米大統領がオンライン形式で主催した「民主主義サミット」の様子

バイデン米大統領が先週にオンライン形式で主催した「民主主義サミット」で、最終日10日、パネル討論会中に台湾の唐鳳(オードリー・タン)政務委員(IT担当)の説明スライド動画から画像が消され、音声だけになる一幕があった。写真は9日、同サミットの様子。ホワイトハウスで撮影(2021年 ロイター/Leah Millis)

バイデン米大統領が先週にオンライン形式で主催した「民主主義サミット」で、最終日10日、パネル討論会中に台湾の唐鳳(オードリー・タン)政務委員(IT担当)の説明スライド動画から画像が消され、音声だけになる一幕があった。スライドが映した南アフリカの非政府組織(NGO)の国ごとの市民の権利の開放度を示す世界地図で、台湾と中国が違う色で塗られ、台湾を独自の存在と表示する形になっていたという。米政権側は、映像遮断を指示していないとしている。

事情に詳しい関係者はロイターに、タン氏の説明中に示された地図に米当局者らが地図に肝をつぶし、ホワイトハウスの要請で約1分後に映らなくなったと話した。

米国務省はスクリーンの共有で「混乱」があったため映像だけ消されとし、「単なる手違い」と述べた。同省報道官は「われわれはタン氏の参加を貴重なものと考えている。透明な統治や人権、虚偽情報との闘いなどについての台湾の世界一級の専門技術がタン氏の登場で明示された」と語った。

ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)の報道官はロイターの報道内容が「正確でない」と指摘。電子メールで「ホワイトハウスがタン氏の動画遮断を一切指示していない」とし、画面共有を巡る混乱が原因だとし、同サミットのウェブサイトで全映像を視聴できると説明した。

タン氏は、地図のスライド資料が理由で米政府が動画を遮断したと思うかとのロイターの取材に対し、電子メールで「スライドの地図とは関係ないと信じている」と回答した。

「一つの中国」

米政権は台湾が中国政府から強い圧力にさらされているタイミングで、あえて台湾への支持を示すために招待した。

しかし米政権が主催する会議で台湾と中国が地図上で別に扱われていることは、「一つの中国」政策と呼んでいる現状の米国の政策と矛盾していると映りかねないと懸念した(関係者)という。

地図は台湾が民権で「開放的」を示す緑色だった一方、中国はアジア地域ではラオスやベトナムや北朝鮮と並んで、「閉鎖的」を示す赤だった。画像が消えた後、スクリーンには「このパネルの参加者の意見はあくまで個人の意見であり、必ずしも米政府の見解ではない」との表示が出た。

関係者の1人によると、地図が画面に出たとたん、米当局者の間では電子メールが飛び交い、NSC担当者は怒って国務省に連絡を入れ、台湾が個別の国であることを示しているように見えるとの懸念を伝えた。米政府は台湾当局に苦情を伝えたが、これに対し台湾側は、画像が消されたことに立腹したという。

消息筋は画像の消去について、地図そのものは国境を明示したものではなく、米国が過剰反応したと指摘した。

台湾外交部(外務省)は「技術的問題」と指摘。その後、タン氏のプレゼン資料は前もって米側に提供していると説明した。「台湾と米国はこの技術的問題について、完全な情報交換を行っており、双方は強固な相互信頼、強固で友好的な関係を有している」と述べた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・中国の不動産バブルは弾けるか? 恒大集団の破綻が経済戦略の転換点に
・中国製スマホ「早急に処分を」リトアニアが重大なリスクを警告
・武漢研究所、遺伝子操作でヒトへの感染力を強める実験を計画していた



あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

独製造業PMI、4月改定48.4 22年8月以来の

ビジネス

仏ラクタリスのフォンテラ資産買収計画、豪州が非公式

ワールド

ウクライナ南部ザポリージャで29人負傷、ロシア軍が

ビジネス

シェル、第1四半期は28%減益 予想は上回る
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中