最新記事

ワクチン

ワクチンを1日に10回接種した男 他人になりすました複雑な背景とは NZ

2021年12月20日(月)12時39分
青葉やまと

本人確認はあえて厳格化せず

ニュージーランドでは12歳以上のすべての人々がワクチン接種を受けることができるが、なりすましによる偽の接種記録の作成が可能だとして、以前にも問題となっていた。

今回の男のような試みは、ワクチンの普及を優先した柔軟な制度の裏をかくものだ。現行制度ではワクチンを希望する場合、医師を通じた事前予約が可能となっているほか、予約不要の接種センターへ直接出向くこともできる。

センターに足を運んだ人々は、住所、氏名、生年月日を職員に伝える必要があるが、職員がそれ以上の身分証明を求めることはない。顔写真入りの身分証明書などで本人確認のプロセスを厳格化することも制度として可能だが、保健省はあえてそのような運用を採らない方針だ。

ホームレスや高齢者、若者や障害をもった人々などのなかには、写真入りの身分証をもたない人々も少なくない。社会的弱者をワクチン接種プログラムから締め出さないよう、保健省は身分証明の提示を求めない方針だ。同省スポークスマンはスタッフ誌に対し、プロセスの厳格化は「可能な限り多くの人々にワクチンを届けるという我々の目標に著しく反する」との考えを明らかにした。

性善説に基づく柔軟な制度が幸いしてか、ニュージーランドでは接種対象となる12歳以上の国民のうち90%以上が、年内に2回目の接種を完了する見込みとなっている。少数の不正は制度設計時に想定されていたであろうが、結果としては制度全体で高い効果を生んでいるともいえそうだ。それだけに、接種に10回臨んだ男の行動に対しては、弱者を考慮したシステムを裏切る行為だとして非難が集中する形となった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミネソタ州に兵士1500人派遣も、国防総省が準備命

ワールド

EUとメルコスルがFTAに署名、25年間にわたる交

ワールド

トランプ氏、各国に10億ドル拠出要求 新国際機関構

ワールド

米政権、ベネズエラ内相と接触 マドゥロ氏拘束前から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 5
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 6
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」…
  • 7
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 9
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 10
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中