最新記事

米政治

バイデンはどうすれば「失敗大統領」にならずに済むか

UNDER PRESSURE

2021年12月18日(土)15時55分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)
ジョー・バイデン米大統領

看板政策の法案成立が難航するなかでバイデンは党内調整に奔走した SAMUEL CORUMーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

<新型コロナ、アフガン撤退、インフレ......。気が付けば瀬戸際に追い込まれていた79歳大統領の命運と、アメリカの行方>

ジョー・バイデン米大統領は、就任1年を前に失敗の瀬戸際に立たされている。

野心的な国内政策を象徴する2つの法案は、激しい党内対立のせいで頓挫しかけた。

それ以前から、ワシントンで40年以上の政治経験を誇るバイデンの能力には、悲惨なアフガニスタン撤退や南部国境の危機的な不法移民問題で疑問符が付けられていた。

一方、新型コロナウイルスのパンデミックはなかなか収束せず、物価は上昇中だ。前任者ドナルド・トランプは、2024年の大統領復帰に向けて早くも選挙活動を始めたかのような政権攻撃を繰り返している。

バイデンは看板政策の大型歳出法案、「ビルド・バック・ベター(よりよき再建)」を何とか成立させようと予算規模を3.5兆ドルから1.75兆ドルに半減させたが、それでも支持率の低下は止まらない。

政治情報サイトのリアル・クリア・ポリティクスによると、これまでの仕事ぶりを支持する意見はわずか42%、不支持は52%に上った。56%近くあった就任直後から14ポイント近い急降下だ。

与党・民主党は議会で過半数ぎりぎりの状態で、中間選挙まで残りあと1年。

バイデンの支持率急落に政治的盟友たちは危機感を覚えている。バラク・オバマ元大統領の顧問だった政治評論家のバン・ジョーンズは、「民主党は崖っぷちをのぞき込んでいる」とCNNに語った。

歴史的に中間選挙は1期目の大統領にとって難しい闘いだ。

オバマ政権1期目の2010年、民主党は下院で63議席を失い、現職大統領の与党として1938年以来の大敗を喫した。民主党内には、2022年はさらにひどいことになると懸念する弱気派もいる。

コロナワクチンの接種が順調に進んでいた今年前半の民主党は、楽観論に包まれていた。

バイデンは独立記念日の7月4日を、アメリカ人が通常の生活に戻れる祝祭の日と決定。側近たちは大統領当選の決め手となった新型コロナ問題で大きな政治的勝利を収めれば、バイデンに強力な追い風が吹くと考えていた。

だがその後、デルタ型変異株が広がり、感染者と死者は再び増加。バイデンの支持率は急低下し始めた。

1兆ドル規模のインフラ投資法を成立させた今、焦点は民主党が進歩派(プログレッシブ)と穏健派の党内対立を乗り越え、大型歳出法案を議会上院で可決できるかどうか。その結果次第では、バイデンの国内政策の行く末に暗雲が立ち込める。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

為替円安、行き過ぎた動きには「ならすこと必要」=鈴

ワールド

中国、月の裏側へ無人探査機 土壌など回収へ世界初の

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 5

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 6

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    映画『オッペンハイマー』考察:核をもたらしたのち…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中