最新記事

サプライチェーン

ナイキのシューズがクリスマス、いや来年夏まで入荷しない!?

Nike Cancels Store's Orders Until Summer '22 as Supply Chain Issues Wreak Havoc on Holiday Shopping

2021年11月24日(水)17時05分
ダニエル・ビラリアル

コロナ禍の去年は買えたのに(2020年12月3日、カリフォルニア州コマース)  Lucy Nicholson-REUTERS

<アメリカのホリデーシーズンを直撃しているサプライチェーンの混乱で、あるナイキショップには来年夏まで注文はキャンセルとのお達しが>

サプライチェーンの混乱がホリデーシーズンのショッピングに打撃を与えるなか、ナイキは少なくとも1店での注文を2022年夏までキャンセルした。

スニーカー・カルチャー関連のポッドキャスト「フル・サイズ・ラン(Full Size Run)」の共同ホストを務めるブレンダン・ダン(Brendan Dunne)が11月23日に投稿したツイートによれば、ナイキは、あるスニーカー小売事業者に宛てて、キャンセルを伝えるメールを送ったという。

「新型コロナウイルス感染症は依然としてグローバル・サプライチェーンに影響を与えており、輸送の乱れが生じています」と、メールは始まっている。「絶えず変化する未曽有の状況に鑑みて、まことに遺憾ながら(2022年春、2022年夏の)ナイキフューチャー(Nike Future)の注文と、(2021年ホリデーシーズンの)残り分をキャンセルすることをお知らせいたします」

ホリデーシーズンの注文も、まだこの店に届いていない分についてはキャンセルということだ。これがほかの店舗にも適用されるか否かは不明だ。ニューズウィークは、ナイキにコメントを求めている。

「受け入れがたい決定であることは承知しています。当社は、可及的速やかに供給を再開することをめざしています」とメールは続く。

サプライチェーン問題は、新型コロナのパンデミックに起因する職場閉鎖と経済悪化をきっかけに始まった。労働者の不足により、製造と出荷に遅れが出た。この遅れにより、生活必需品が不足するのではないかとの不安が生じ、消費者物価も上昇した。

物価急騰、でもアメリカ人は買う気満々

この危機は、ホリデーシーズンのショッピングに影響を与えている。最新の調査では、アメリカ人の多くが、ガソリン価格の上昇を理由に、感謝祭に車で遠出はしないと回答している。また、最近行われた世論調査では、物価の急騰に伴って、アメリカ人の大多数が、いつも購入している商品(感謝祭のディナーも含む)に、以前よりも高い金額を払っていることが明らかになっている。一部の地域ではクリスマスツリー不足も起こっている。

にもかかわらず、経済学者たちの予測によれば、アメリカ人たちはホリデーシーズン中に大々的な支出を計画しているという。だが、サプライチェーン問題は2022年になっても続く可能性が高く、2023年まで続く可能性さえある。

カリフォルニアの港で、荷下ろしできずに入港を待つ貨物船の数が過去最多となるなか、バイデン政権は先ごろ、この停滞状態を解消するべく、主要港を24時間態勢で稼働させる協定を仲立ちした。さらに、「トラック運送業者や労働組合と協議し、トラック運転手を増やそうとしている」とも述べている。

車両基地や倉庫は労働力不足に悩まされており、貨物コンテナの荷ほどきをできる人がほとんどいない状態だ。こうした場所の多くは、荷物が来るのを待ち構えつつ、大急ぎで配達することを余儀なくされている。後がつかえているからだ。実際に必要な数以上の商品を注文・備蓄している小売企業も、この問題を悪化させている。

この危機をさらに悪化させているのが、アメリカ国内のサプライチェーンを構成する各所のあいだで商業データが共有されているケースがめったにないという事実だ。そのため、サプライチェーンが全体として効率的に稼働せず、寸断されたままになっていると、ロサンゼルス港のジーン・セロカ港湾局長はワシントン・ポストに話している。
(翻訳:ガリレオ)

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米シカゴ連銀総裁、前倒しの過度の利下げに「不安」 

ワールド

IAEA、イランに濃縮ウラン巡る報告求める決議採択

ワールド

ゼレンスキー氏、米陸軍長官と和平案を協議 「共に取

ビジネス

12月FOMCでの利下げ見送り観測高まる、モルガン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中