最新記事
リモートワーク

リモートワークのパソコン画面、上司から丸見え...米企業の60%が監視ソフトを導入

2021年11月19日(金)18時36分
青葉やまと

米企業の60%が監視ソフトを導入していた (画像はイメージ)Vesnaandjic -iStock

<リモートワークを経て久々に出社すると、上司卓にはモニターがずらりと並んでいた......>

リモートワークが普及したことで、感染を心配することなく自宅で安心して作業に集中することが可能になった。一方、業務がプライベートの時間を侵食しはじめていると感じることもあるだろう。

心理的な問題だけでなく、パソコンの利用形態によってはプライベートな生活が職場に筒抜けとなる可能性がある。電子的な監視の広がりによってプライバシー上の懸念が発生し、海外で問題となっている。

「ぞっとしました。」イギリスに住む31歳エンジニアの男性は、自身の体験を英BBCにこう打ち明ける。イギリスで大規模なロックダウンが実施されると、男性の会社は従業員ほぼ全員を自宅からのリモート勤務とし、プライベートで各自が所有しているパソコンを会社のネットワークに接続するよう命じた。

個人のノートPCあるいはデスクトップPCを会社のサーバに接続することで、より高いパフォーマンスを引き出せるとの説明だった。しかし、男性がオフィスに戻る必要が生じて久々に出向くと、そこには目を疑うような光景が広がっていた。

「ある日オフィスに入ると、大量のモニターの電源が投入され、全員のデスクトップがそこに表示されているのを見つけたのです」と男性は語る。上司は部下が勤務時間中に何をしているかを把握していただけでなく、例えばどんな動画を観ているかなど、プライベートな時間のPC上での活動も監視可能になっていた。

こうしたリモート監視を導入しているのは、男性の勤務先だけではない。BBCは民間企業の調査結果をもとに、18歳から34歳までの在宅勤務者ではおよそ2人に1人が類似の監視を受けていると報じる。なかには自宅でありながらカメラによる監視を受けているケースもあり、在宅作業者の13%がこれに該当する。本件はイギリスでの事例だが、技術的には日本でも十分に起こりうる事態だ。

生活サイクルや転職の意向も筒抜け

リモート監視ソフトウェアの導入は、パンデミックの長期化を受け、世界で増加傾向にある。米調査会社のガートナーによると、現時点で監視ソフトを導入している企業は、米企業の60%にのぼる。

監視ソフトによっては、単に画面をモニタリングするだけでなく、生産性を測定・数値化して上司にレポートするものもある。たとえばメール1件の返信にどのくらい時間を費やしているかを測定したり、タイピングの速さの評価や、プライベートで利用したSNSの情報の収集なども可能だ。

ワシントン・ポスト紙は、自宅作業中に監視される可能性のある情報を詳しく例示している。会社のメールアドレスでやり取りした内容が会社側に把握されることがあるのは周知だが、企業が採用している監視ツールの種類によっては、プライベートのメールアドレスで送受信した内容も傍受が可能になる。

米Teramind社のツールでは、転職サイトへのアクセス履歴や、SNS上に投稿したネガティブなワードなどを検出し、従業員が会社に対して抱いている不満度を検知することも可能になっている。また、個人で所有するPCのマウスがいつ操作されたかを把握し、起床や就寝などの生活サイクルを推定することも不可能ではない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米失業保険継続受給件数、10月18日週に8月以来の

ワールド

中国過剰生産、解決策なければEU市場を保護=独財務

ビジネス

MSとエヌビディアが戦略提携、アンソロピックに大規

ビジネス

英中銀ピル氏、QEの国債保有「非常に低い水準」まで
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中