最新記事

欧州

欧州議会みごと!訪台によりウイグル問題を抱える中国を揺さぶる

2021年11月4日(木)22時09分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

その両方とも選択できないところに中国を追い込んでいった欧州議会の、なんと見事なことよ!

あっぱれと言いたい。

中欧投資協定は、前述したように習近平政権発足と同時に2013年から中国側がEUに提案して交渉を進めてきた。同時に発足した「一帯一路」構想は、この中欧投資協定を補完するためにあったと言っても過言ではない。

中国は、いずれはアメリカとの覇権競争にぶつかり、中国がアメリカを凌駕しそうになると、アメリカが何としてでも中国を潰しにかかってくるだろうことは分かっていた。だから習近平は政権発足と同時にEUを味方に付けようと、国家戦略を練ってきたのである。

少数民族問題は習近平のアキレス腱

EUさえ中国側に引き付けておけば、アメリカが何をしようとも中国は安泰だ。習近平はそう思っていただろう。

しかし、ここにきて「少数民族」の問題が政権の足を引っ張り始めた。

拙著『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』で、習近平の父・習仲勲が如何に少数民族を大事にし、少数民族と仲良くしてきたかを、詳細に書いた。その父の思いを裏切ったのは、中国共産党の統治が少数民族弾圧なしには成立しなからで、これこそが「習近平、最大のアキレス腱になる」と、しつこいほどに拙著で警鐘を鳴らしてきた。

事態は、その警鐘通りに動いている。

父の思いを裏切ってでも共産党による一党独裁を貫く方を選んだ習近平の「自業自得」でもあり、中国共産党による支配の宿命でもある。

習近平は今それを、いやというほど思い知らされていることだろう。

アメリカを恐れていない中国

中国はバイデン大統領が率いるアメリカを恐れてはいない。

トランプ政権の時は、トランプ(元)大統領が自ら次から次へと国際社会から離脱していってくれたので、トランプ(中国語読みで川普)に「川建国」(中国を再建国してくれる川普=トランプ)という綽名を付けて感謝したほどだ。

バイデンは「アメリカは戻ってきた」と叫んで国際社会に戻ってきたことをアピールしたが、アフガン問題でヨーロッパ諸国の信頼を失ってしまった。その不名誉を挽回しようとローマでのG20に出席し、イギリスのグラスゴーで開催されたCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)で「アメリカがリーダーシップを発揮する」と叫んでみたものの、会議で居眠りをしている動画が世界を笑わせてくれた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国企業、28年までに宇宙旅行ビジネス始動へ

ワールド

焦点:笛吹けど踊らぬ中国の住宅開発融資、不動産不況

ワールド

中国人民銀、住宅ローン金利と頭金比率の引き下げを発

ワールド

米の低炭素エネルギー投資1兆ドル減、トランプ氏勝利
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中