最新記事

自動車

EV新興企業リビアンはテスラの敵か、それとも味方か?

2021年11月27日(土)16時30分
竹内一正(作家、コンサルタント)

リビアンの創業者でCEOのR.J.スカーリンジはMITで機械工学の博士号取得した人物で、マウンテンバイクが趣味のアウトドア派でもある。

自動車メーカーを作ろうと彼が心に決めたのは18才の時だった。そして、2009年にリビアンを創業。この時26才だった。

リビアンCEOの座は案外もろい

スカーリンジは技術志向のCEOだが、細部にこだわりデザインにも一家言を持つのはイーロン・マスクと似ている。そして、周りから何でも短時間で吸収する才能も同様だ。しかし、発言はイーロンよりも堅実で控え目だ。

さて、アマゾンから電動の配送用バンの10万台の大量注文を受け、IPOにも成功したリビアンだが、問題も少なくない。

テスラがそうだったようにクルマの大量生産は計画通りにはいかない。イーロン・マスクは3万5000ドルのEVセダン「モデル3」で生産地獄を経験したが、本当にリビアンはEVトラックを量産できるのかと疑問を持つ人々も少なくない。

だが、それ以上に問題なのはリビアンの経営権だ。

リビアンの最大株主は創業者のR.J.スカーリンジではない。アマゾンだ。その保有株数は約20%で、一方スカーリンジCEOは約2%を持つにすぎない。

議決権においても、スカーリンジは約9.5%を持つが、アマゾンはその上を行く約17%を有する。そして、CEOよりも多くの株を保有する株主にはアマゾン以外にもフォードや米資金運用大手のティー・ロウ・プライスなどが名を連ねている。

こうしてみると、スカーリンジCEOの経営支配権が弱い点を問題視するのも頷ける。

テスラと比較すると、イーロン・マスクはテスラ株の約20%を持ち最大株主の座にあって、経営のグリップをがっちりと握っている。だから、テスラは赤字であっても思い切った施策を連打することができたのだ。

リビアンはアマゾンから電動の配送用バンの10万台の注文を受けているが、もし、出荷が大幅に遅れることになれば、リビアン株の20%を保有する最大株主アマゾンは、リビアンCEO更迭という手段に打って出ることもあり得る。

事業計画通りに事が進めばいいが、頓挫すると持ち株数の少なさがスカーリンジCEOのクビを絞めかねない。

しかし、リビアンの本当の戦いはこれからだ。トラックをEV化し大量生産する。その手腕を楽しみに今は見守るべきだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円急落、日銀が追加利上げ明確に示さず

ビジネス

米国株式市場=続伸、ハイテク株高が消費関連の下落を

ワールド

ベネズエラ情勢巡る「ロシアとの緊張高まり懸念せず」

ビジネス

米11月中古住宅販売、0.5%増の413万戸 高金
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中