最新記事

インド

インド首都圏、抗体保有率97%を突破 しかし「集団免疫とはいえない」と政府筋

2021年11月2日(火)16時55分
青葉やまと

新型コロナの集団免疫、十分なデータなく

集団免疫を判断できない理由としてインド政府筋は、「人口のうち特定の割合が感染した後はこのウイルスが広がらないということを示す研究またはデータが一切ない」ことを挙げる。

インドの場合は市中感染とワクチン接種の両方により抗体保有者が増加したと考えられるが、少なくともワクチンによる集団免疫獲得の可否については、日本の厚生労働省も判断を保留している。現段階では「新型コロナワクチンによって、集団免疫の効果があるかどうかは分かっておらず、分かるまでには、時間を要すると考えられています」との立場だ。

ネイチャー誌は今年3月、一部のデータサイエンティストたちが従来の予測を転換しはじめており、集団免疫の獲得は「おそらく不可能」だと考えるようになったと伝えている。絶え間ない変異株の出現や、ワクチンの普及率および有効性が100%にはならないことなどが主な理由だ。

もっとも、ワクチン接種には重症化リスクを抑制する効果があるため、接種が無意味だという論旨ではない。ワクチンの効果と持続期間次第では、集団免疫によってウイルスが根絶されることはなくとも、インフルエンザのような存在になるシナリオは考えられる。

「魔法の境界線」は存在しない

ただし、今回のインドの事例に関して、97%の抗体保有率という数字だけをみて集団免疫獲得と断言するのは早計だ。米ジョンズ・ホプキンズ大学傘下のブルームバーグ公衆衛生大学院は10月、疫学者らによる解説記事を掲載し、集団のなかで何割が免疫を持てば集団免疫を達成できるかという「魔法の境界線」は存在しないと指摘している。

同記事は、アウトブレイクの起こりにくさには複数の要因が関連する、と解説する。ウイルス自体の感染力やワクチンの普及率、そして社会的距離の保持といった対策などが複雑に関連しており、単純に抗体保有者の割合だけでは収束の有無を論じることができない。

デリーが真に集団免疫を獲得したのであれば、今後感染が発生したとしても、いずれも小規模なアウトブレイクに留まるはずだ。しかし、実際にそうした傾向が続くかどうかは、突破感染の割合や変異株の出現などに大きく左右されることになる。

インドでは4月の宗教大祭「クンブメーラ」が感染第2波を拡大したといわれるが、11月以降も新年の祝祭「ディワリ」などが続く。集団免疫の効果がみられるか否かについては、祝祭中の行動習慣が影響することも考えられる。より長期的な視点に立った判断を待つことになりそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

シティとスタンチャート、ドバイ従業員に在宅勤務指示

ワールド

米の対イラン戦費、最初の6日で110億ドル超と政権

ビジネス

インタビュー:市場の振れ幅拡大で収益機会広がる、好

ワールド

米、不公正貿易調査を開始 日本含む16カ国・地域対
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃に支持が広がるのか
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 5
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 6
    「邪悪な魔女」はアメリカの歴史そのもの...歌と魔法…
  • 7
    イランがドバイ国際空港にドローン攻撃...爆発の瞬間…
  • 8
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 9
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 10
    ホルムズ封鎖で中国動く、イランと直接協議へ
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 5
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 6
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 7
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中