最新記事
アメリカ社会

3年で33人が殺された刑務所がアメリカに。改善の兆しもなし

DOJ Says Alabama Has Not Fixed Its Prisons, 33 Inmates Died in Last 3 Years

2021年11月25日(木)20時34分
ケイティー・ワーマス
刑務所イメージ

2021年第1四半期の時点でアラバマ州刑務所の欠員率は50%を超えていた JANIFEST-iStock

<これぞブタ箱! 環境が劣悪で憲法違反の状態にあるとして司法省は2年超前に同州を提訴しているのだが>

米アラバマ州の刑務所では、過密状態や人手不足のために過去3年間で33人の受刑者が殺されているにもかかわらず、いまだに状況が改善されていないと米司法省が指摘した。AP通信が報じた。

司法省は2年以上前に、アラバマ州の刑務所の環境があまりに劣悪で憲法違反の状態にあるとして、同州を提訴。その後、連邦判事から申し立ての内容をより具体的に述べるよう命じられたことを受けて、11月19日に訴状の内容を更新した。

それによれば、アラバマ州の刑務所では2018年から2020年の間に、少なくとも33人の受刑者が殺害されていた。司法省はさらに、2021年に入ってから7人が、刃物で刺されるか窒息させられるかして殺害されたと述べている。

司法省の当局者たちは、同州内の刑務所では依然として暴力が多発しており、刑務所はどこも「過密状態で、危険なほどの人手不足」状態にあると指摘した。アラバマ州は提訴を受けて、州内の刑務所に問題があることは認めているが、刑務所の環境が憲法違反の状態にあるという申し立てについては否認している。

訴状の中で司法省は次のように述べた。「国がアラバマ州に対して、同州の男性刑務所の被収容者が置かれている状況について、憲法違反の通知を行ってから2年半になる。しかし被収容者たちはその間も、ほかの被収容者によって死に至らしめられたり、物理的な暴力を受けたり、性的虐待を受けたりする高いリスクに耐え続けてきた」

以下にAP通信の報道を引用する。

2021年も少なくとも10件の「殺人疑い」か

米司法省は、アラバマ州の刑務所環境があまりに劣悪だと指摘。残酷あるいは異常な刑罰を禁止している米合衆国憲法に違反しており、州当局者がこの状況を意図的に無視しているとして提訴した。

司法省の月例報告書では、2021年に入って同州の刑務所内で殺人行為は報告されていないが、「メディアや被収容者の権利を擁護する人々の報告によれば」、2021年に入ってから受刑者が別の受刑者を殺害する事件が、少なくとも10件起きていると当局者たちは訴状で述べた。刑務所制度では、捜査中の死亡事例については、報告書の数字には含まれない。

ドナルドソン刑務所では、53歳の受刑者が首を絞められて死亡。この受刑者については、別の受刑者が彼を「殺す」よう命じていたとして、本人が怯えていたことを示すメモが見つかったということだ。

AP通信は9月に、殺人の可能性があるとして捜査中の受刑者の死亡事例が何件あるのか、司法省に記録の開示を求めた。司法省からは11月2日に回答があり、「どの死亡事例の捜査についても『殺人の可能性がある事例』という分類は行っていないため、情報は提供できない」とのことだった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、台湾への武器売却を承認 ハイマースなど過去最大

ビジネス

来年のIPO拡大へ、10億ドル以上の案件が堅調=米

ビジネス

英中銀、5対4の僅差で0.25%利下げ決定 今後の

ビジネス

ノバルティスとロシュ、トランプ政権の薬価引き下げに
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中