最新記事

事件

韓国ネットに新たな闇 犯罪者を晒す「デジタル刑務所」、えん罪で死者も

2020年9月29日(火)20時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

私刑サイト「デジタル刑務所」は今も犯罪者と思われるとする人たちの個人情報を掲載している。画像は「デジタル刑務所」からキャプチャしたものを一部加工

<ネット先進国の韓国は、ネット犯罪の闇も深い。その闇に引きずり込まれた者がさらなる闇を生み出した>

奴隷と呼ばれる女性の性搾取や幼児ポルノなどの映像を掲載した「n番部屋事件」が韓国社会を震撼させ、犯人の身辺情報公開を求める声が高まっていた今年3月、韓国のネット上に突如「デジタル刑務所」というサイトが誕生した。

韓国メディアの報道によると、このデジタル刑務所運営者の一人は、自身の親戚が「n番部屋事件」の被害者だったと語り、性犯罪に対する刑罰が軽すぎることに反対するため「デジタル刑務所」を始めたと主張しているという。

この「デジタル刑務所」というサイトは、個人情報を晒す私刑サイトだ。殺人などの重刑犯や性犯罪者、幼児虐待者、n番部屋利用者などを中心に、犯罪者の顔写真はもちろん、罪名、裁判過程、住所、携帯番号、音声、メールアドレス、ネット利用時のID等にいたるまであらゆる個人情報を公開している。個人で運営しており海外にサーバーを置いているため、運営者を特定するのが難しく、また1期・2期と運営者は複数いるとされている。

えん罪が次々と発覚

そして、このサイトをめぐって被害者が出てしまった。警察によると、9月5日韓国の名門大学の1つ高麗大学に在学中の男性が自殺したと発表した。調べによると、9月3日デジタル刑務所にこの男子学生の顔写真、学校、専攻、携帯電話番号など個人情報が公開されていたことが分かり、それが原因で自殺したと言われている。

この学生についてデジタル刑務所側は、「男子学生が"知人陵辱"した」と掲載している。"知人陵辱"とは知人の顔をわいせつな写真と合成して、インターネット上に流布する行為だ。

男子学生の情報がデジタル刑務所にアップロードされると、男性は高麗大学の学生専用コミュニティ掲示板に「デジタル刑務所に載っている写真と電話番号、名前は私だ。ただその外のすべての情報は決して事実ではない」と主張を書き込み、その後自ら命を絶ってしまった。

えん罪の被害者はこの学生だけではなかった。他にも、数名が無実なのにもかかわらず虚偽情報を掲載される被害にあっている。そのうちの一人、格闘技選手キム・ドユン選手は、今年7月に性犯罪の犯人として個人情報流布されてしまった。後に、デジタル刑務所側がこれは誤った情報だったと謝罪文を掲載したが、キム選手の元には今でも誹謗中傷のメッセージが届いているという。

また、カトリック系医科大学に勤務するチェ・ジョンホ教授もえん罪被害者の一人だ。今年6月、デジタル刑務所の加害者リストに、チェ教授がn番部屋へ送ったとされるメッセージ画像と、個人情報が掲載された。

チェ教授はすぐに警察に通報し、サイバー警察に携帯を提出してすべてのデータ分析調査を依頼して、無実を訴えた。2カ月掛けて、ようやくチェ教授の潔白が証明されサイト運営側も謝罪文を掲載したが、その間の被害は相当なものだったという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国土安全保障省報道官が退任へ、強硬な移民対策への

ワールド

イラン外相、米との核協議で「指針となる原則」で大筋

ビジネス

米ワーナー、パラマウントに1週間の交渉期間 上積み

ビジネス

インフレ2%に向かえば年内「数回」の利下げ可能=シ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 4
    極超音速ミサイルが通常戦力化する世界では、グリー…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    アメリカが警告を発する「チクングニアウイルス」と…
  • 7
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 10
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 8
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中