最新記事

台湾

台湾進攻の「次は沖縄」...中国の野心は「ヤマアラシ」作戦で防げ

SAVING TAIWAN

2021年10月19日(火)20時20分
ブラマ・チェラニ(インド政策研究センター教授)
台湾軍ヘリ

巨大な中華民国国旗をつり下げる台湾軍のヘリ(9月28日)CENG SHOU YIーNURPHOTO/GETTY IMAGES

<中国の台湾進行を防ぐには、「非対称」戦略を進めることで中国に物理的な高いコストが発生すると意識させることが必要だ>

中国の強引な拡張主義は、これまでになく危険な方向に向かっているのかもしれない。最近は記録的な数の中国軍機が台湾の「防空識別圏(ADIZ)」に進入している。台湾の吸収による「祖国統一」を目指す中国政府の本気を示す明確なメッセージだ。

中国は台湾を一貫して自国領土だったと言っているが、実際には歴史修正主義に基づく疑わしい主張だ。台湾は歴史の大半を通じ、非中国系のマレー・ポリネシア系民族の居住地だった。地理的にも台湾本島は中国大陸よりフィリピンに近い。住民の大半も現状維持を望んでいる。

だが習近平(シー・チンピン)国家主席は1950年代に毛沢東がチベットで行ったように、「祖国統一」の名の下に台湾の併合を狙っているようだ。中国が台湾に侵攻すれば、近年で最大の世界平和への脅威となる。

台湾が占領されれば、死活的に重要な地域における航行の自由が損なわれ、インド太平洋地域のパワーバランスが覆る。中国は日本列島から台湾、フィリピン、ボルネオ島へと続く「第1列島線」を突破し、近海を支配下に置ける。一方、信頼できる同盟国としてのアメリカの評価は決定的に傷つく。台湾の征服を防げない(または防ぐ気がない)のであれば、他の国もアメリカには頼れないと考えるだろう。

台湾に隣接する南端の島々を持つ日本にとって、このリスクは特に深刻だ。麻生太郎副総理兼財務相(当時)が7月に語ったように、「次は沖縄」かもしれない。アメリカに頼れない日本は再軍備から核の保有に向かう公算が大きい。韓国、フィリピン、タイなどは中国の勢力下に入りそうだ。

台湾防衛に米軍を投入すると明言せよ

それでもアメリカは、中国による台湾占領とアジアの安全保障秩序崩壊を本気で防ごうとしているようには見えない。歴代の米政権は南シナ海から香港、新疆ウイグル自治区まで、習の拡張主義的行動を何度も許してきた。バイデン米大統領が最近、中国に融和的姿勢を見せていることも、習の自信を深めているはずだ。

中国の台湾占領を阻止できる手段があるとすれば、国際社会の評価だけでなく、物理的にも高いコストが発生すると中国側に意識させることだ。だからこそ、バイデンは台湾防衛のために米軍を投入すると、習にはっきりと告げなければならない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中