最新記事

ノーベル平和賞

ノーベル平和賞は香港で踏ん張る独立系メディアに

Hong Kong Free Press Could Win Nobel Peace Prize, and Unleash China's Fury

2021年10月7日(木)14時06分
ジョン・フェン
香港のレノン・ウォール

中国の圧力に抵抗する人々の無数のメモ(2019年7月) 願いも虚しく、今や自由は風前の灯 Jorge Silva-REUTERS

<世界中で言論の自由が試練に直面する今こそ、ノーベル平和賞は香港のフリープレスに与えられるべきだ>

10月8日に発表される2021年のノーベル平和賞には、300を超える個人や組織が候補として推薦されている。そのひとつは、香港のニュースサイトだ。

香港フリー・プレス(HKFP)は、2015年にクラウドファンディングで設立された香港の独立系ジャーナリズムの最後のシンボルのひとつであり、これまで香港の民主化運動や、2020年夏に国家安全維持法が制定されて以降の中国政府による弾圧などを報じてきた。

HKFP.jpeg

中国本土ではブロックされて閲覧不可になっている同サイトは、1989年の天安門事件の追悼集会をめぐる攻防や、新疆ウイグル自治区のウイグル人およびその他の少数派民族に対する中国の人権抑圧的な政策などについても詳細に報じてきた。

2021年に入ってからは、香港のメディア王として知られる黎智英が収監された問題や、彼が創業した中国政府に批判的な日刊紙、蘋果日報(アップル・デイリー)が廃刊となった問題を取り上げた。いずれも、香港国家安全維持法の名の下に行われた取り締まりの結果だ。

自由と民主主義を守れ

香港における報道の自由が消滅しつつある中で創設されたHKFPは、自分たちの使命について、ウェブサイト上で次のように説明している。

「我々は大中華圏における最も独立した、かつ信頼に足る英語の情報源を目指している。権力者の声ではなく、声なき者たちの声を広めることを目指し、香港の基本的価値観と自由に関する状況を監視していく。HKFPのチームは恐れることなく、事実を公平に報じることに全力を尽くす」

HKFPをノーベル平和賞の候補に推薦したのは、ノルウェー議会の議員であるオーラ・エルベストゥエン、テリエ・ブレイビクとヨン・グネスだ。ブレイビクは、候補者推薦の締め切りだった1月31日の2日前に、HKFPを候補として申請したことを明かし、HKFPは「中国政府に、香港への行き過ぎたの抑圧の責任を取らせるために不可欠」な存在だと評価した。

3人は推薦状の中で、「香港の自由と民主主義が攻撃を受けている」と主張し、さらに次のように述べた。「HKFPは、香港で独立系メディアを生かし続けるために全力を尽くしている。報道の自由は、国内にも国家間にも平和や友情をもたらすために欠かせないものだ。世界の多くの場所で言論の自由が試練に直面している今こそ、HKFPはノーベル平和賞を受賞するのにふさわしい組織である」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ軍撤退なければ、ドンバス地方を武力で完全

ビジネス

アングル:長期金利2.0%が視野、ターミナルレート

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ワールド

ADBと世銀、新協調融資モデルで太平洋諸島プロジェ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中