最新記事

詐欺

スマホを貸しただけなのに... メッセ機能で10万円超奪う詐欺が横行

2021年10月13日(水)17時56分
青葉やまと

スマホを貸しただけなのに...  (写真はイメージ)4x6 - iStock

<貸した相手がメッセージ・アプリを立ち上げたら、危険信号かもしれない>

困ったふりをして見ず知らずの住民に近づき、借りたスマートフォンのメッセージ機能を不正に操作する。こんな大胆な手口で日本円にして数十万を奪う詐欺行為が、アメリカの一部地域で繰り返し発生している。

被害が集中しているのは、東部ノースカロライナ州にあるシャーロットの街だ。全米第17位の人口を擁する都市ながら、夜の散歩にも気兼ねなく出歩ける環境となっており、大都市としては比較的安心して過ごせる治安の良さが好まれてきた。

直近では10月に入ってから、庭先で困っていた男の助けになろうとした男性住民が被害に遭い、2200ドル(約25万円)を騙し取られている。頼まれて貸したスマホを白昼堂々、目の前で悪用された。男性はすぐ被害に気づいたが、男はすでに逃走したあとだった。

その手口とは

具体的な経緯はこうだ。シャーロットの住宅街に住むトレヴァー・ハートレー氏は、自宅で庭仕事に勤しんでいた。すると、遠くで近隣住民と話し込んでいた男が庭先に近づき、タイヤがパンクしたので交換作業のためジャッキを貸してくれないかと話しかけてきた。

ハートレー氏がジャッキはないと断ると、男はなおも食い下がり、それでは仲間の助けを呼びたいので電話を貸してくれないかと頼み込んできたという。気の毒に思ったハートレー氏は折れ、その場でスマホを男に貸した。

嫌な予感がしたのは次の瞬間だ。てっきり通話をするものだとハートレー氏は思っていたが、男はテキスト・メッセージを操作しはじめた。スマホの上でせわしなく指を動かし、わずかな時間のうちにスマホをハートレー氏に突き返すと、逃げるようにして立ち去ったという。

不安になったハートレー氏がスマホを確認すると、メッセージアプリ内から個人送金できる機能が悪用されていた。チャット画面から送金ボタンを押すことで、会話中の相手に対して瞬時に送金することができる。

こうしてチャット画面を通じて送金サービスのVenmoを呼び出され、自身の銀行口座から身に覚えのない宛先に対して2200ドル(約25万円)が送金されていた。ハートレー氏は米NBC系列の地元局WCNCに対して「男は操作方法を熟知していた」と述べ、一瞬の出来事だったと振り返る。

被害は過去にも

今年2月にも、同じシャーロットの街で同様の被害が発生している。このときは女性が被害者となり、同じく高額の送金処理が実施された。女性が自宅でリモートワークをしていると、玄関をノックする音が響き、ドアを開けると男が立っていたという。車にキーを閉じ込めてしまったので兄弟を呼びたいと説明され、スマホを貸したところ同様の被害に遭った。

テキストメッセージを操作する様子を直近で注視していたが、不審な点には気づかなかったという。被害に気づいたのは、男が立ち去ったあとにメールで送金通知を受け取った瞬間だった。大胆にも送金処理は2度行われており、銀行口座から奪われた額は計1000ドル(約11万円)を超える。「ここは安全なコミュニティなので皆人々を信頼しており、だから油断があった」と女性は悔いる。平和だった街の住民たちも、同じ手口の詐欺が横行しはじめたことで困惑顔だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米雇用なお堅調、景気過熱していないとの確信増す可能

ビジネス

債券・株式に資金流入、暗号資産は6億ドル流出=Bo

ビジネス

米金利先物、9月利下げ確率約78%に上昇 雇用者数

ビジネス

現在の政策スタンスを支持、インフレリスクは残る=ボ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 5

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 6

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    映画『オッペンハイマー』考察:核をもたらしたのち…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中