最新記事

ライフスタイル

地方移住で生活費は安くなる......とは限らない

2021年9月29日(水)14時30分
舞田敏彦(教育社会学者)
農家の家族

都市部から地方に移住すれば住居費は確実に安くなるが kyonntra/iStock.

<全国の都道府県庁所在地で比較すると、1人あたりの生活費が高いのは東京ではなく、住居費と自動関連費が両方かさむ福岡や札幌、鳥取などの地方都市>

2021年7月16日の日経新聞WEB版に「地方移住、こんなはずでは... 増える支出に落とし穴」という記事が出ている。生活費が安くなるからと移住したものの、光熱・水道費や自動車関連費がかさんで、かえって支出が増えてしまった、という体験談が紹介されている。

東京からの移住の場合、住居費は確実に安くなるが、光熱・水道費は上がるだろう。田舎はプロパンガスが主流だが、都市ガスよりも料金は高い。水道も割高だ。自動車の費用は言うまでもない。公共交通網が発達している東京と違ってクルマは必須で、維持費もバカにならない。以前にくらべてガソリン代も上がっている。

データで総決算の比較をするとどうなるか。総務省の『家計調査』に、年間支出額の平均値が県庁所在地別に出ている。①住居費、②光熱・水道費、③鉄道・バス代、④自動車関連費の合算を基礎生活費とみなし、地域ごとに比べてみる。③を入れるのは、都市部では自動車は不要でも、公共交通機関の費用が必要になるからだ。

手始めに、東京23区と筆者の郷里の鹿児島市を比べてみる。<図1>は、4つの費目を積み上げた棒グラフだ。

data210929-chart01.png

住居費は鹿児島市の方が安いが、自動車関連の費用がかかる。だがトータルで見ると、鹿児島市の方が安い。これは2人以上世帯のデータだが、平均世帯人員は東京23区が2.97人、鹿児島市が2.92人なので、家族サイズを考慮しても鹿児島市の方が割安だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

林氏が政策公表、物価上昇緩やかにし1%程度の実質賃

ビジネス

午後3時のドルは147円前半へ上昇、米FOMC後の

ビジネス

パナソニック、アノードフリー技術で高容量EV電池の

ワールド

米農務長官、関税収入による農家支援を示唆=FT
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中