最新記事

ドイツ

ドイツ震撼 コンビニのバイト学生がマスク着用を注意して射殺された

2021年9月22日(水)12時00分
モーゲンスタン陽子

極右の反規制派や陰謀論者たちの暴力的な言説が現実になった RND-YouTube

<ドイツで店内のマスク着用ルールを注意した20歳のアルバイト男子学生が頭部を撃たれ殺害された>

9月18日夜、ドイツのラインラント=プファルツ州で、顧客にマスク着用を促したガソリンスタンドの20歳のアルバイト男子学生が頭部を撃たれ殺害された。

後日、自ら出頭した49歳の男は、普段からコロナ規制にうんざりしており、このような規制を強要した学生が殺されたのは「自業自得」であり、「先例を作らなければならなかった」という趣旨の発言をしている。

若い命が不当に奪われたばかりでなく、以前から懸念されていた陰謀論者たちによる暴言がついに現実として起こったことに、ドイツ中がショックを隠せないでいる。

店内でのマスク着用ルールを注意しただけ

ラインラント=プファルツ州のイーダー・オーバーシュタインは人口3万人弱の小さな町だ。さまざまな宝石の原石が取れるので「宝石の町」として知られている。

ドイツのガソリンスタンドは、ほとんどの店が閉まる夜8時以降や日曜祝日にも営業しており、中で軽食なども取れるようになっていて、ちょっとした「コンビニ」のような存在だ。警察の発表によると、18日夜7時45分頃、49歳の男がビールの6本パックを2つ購入しようとしたが、店内でのマスク着用ルールを守っていなかったため、20歳の男子学生店員に注意された。この時、男は購入せずに退店したようだ。

その後9時25分ごろ、今度はマスクをして同ガソリンスタンドに戻った男はビール6本の支払いのためレジに行くと、同店員を挑発するためにマスクを外した。店員が再び注意すると、男はリボルバーを取り出し正面から頭部を撃ち抜いた。

男は徒歩で逃走したが、翌日自ら警察に出頭。コロナ規制に反対で多大なストレスを感じており、「先例を作る以外に出口はない」と言い、また被害者は「そのような規制を強要したのだから、このような結果となったのは彼の責任だ」と述べた。

その後の家宅捜査で銃器が発見されているが、男は銃器所有免許を保持していない。

極右勢力は事件を「歓迎」

利己的な理由で若い命が奪われ、容疑者がまったく悪びれていないだけでもショックだが、さらに国民を不安に陥れているのは、兼ねてから指摘されていた極右の反規制派や陰謀論者たちの暴力的な言説が現実になったことだ。

今回の殺人事件を受け、(FacebookやTwitterのように暴力的な内容の削除をしない)Telegramなどのプラットフォームではすでに男の行為が歓迎ムードで語られている。被害者が学生(=左翼と考えられているらしい)だったことで、「ダニが一匹減った」などと、想像を絶する酷さだ(DER TAGESSPIEGEL)。

男がこのような過激なチャットに参加していたかどうかは不明だが、もし何らかのグループと繋がりがある場合、今回のような理不尽な暴力沙汰が今後さらに続く可能性もある。警察は今も調査を続けている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国の若年失業率、7月は17.8%に上昇

ビジネス

ラトニック米商務長官、日米関税合意の文書「数週間後

ワールド

トランプ氏、米地上軍派遣を否定 ウクライナ「安全保

ワールド

米財務長官「中国と非常に良い協議行った」、関税巡り
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 7
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    時速600キロ、中国の超高速リニアが直面する課題「ト…
  • 10
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 7
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中