最新記事

アフガニスタン

タリバンに追われる女性検察官が調べていたこと

Taliban Used Children to Plant Bombs, Now Hunts Prosecutor Who Investigated

2021年9月17日(金)20時57分
デービッド・ブレナン
アフガニスタン女性(イメージ)

正義のために働いていた「ミナ」は一転、追われる身に(写真はイメージです) RollingEarth-iStock.

<タリバンが全権を掌握して「賞金首」になった彼女は、タリバンが子供たちに爆弾を仕掛けさせていたことを告発しようとしていた>

イスラム原理主義組織タリバンが、アフガニスタン人のある女性検察官の行方を追っている。タリバンによる児童虐待の問題を調査してきたこの検察官は、タリバンに処刑されるのを恐れて身を潜めている。

この女性検察官──仮に「ミナ」と呼ぶ──が本誌に明かしたところによれば、アフガニスタン中部のワルダク州の彼女の自宅に、タリバンの軍事委員会から脅迫めいた最後通告の手紙が届いたという。彼女はその後、自宅を逃れて別の場所に避難している。

ミナの自宅宛てに送られてきたその手紙には、「お前はイスラム首長国のムジャヒディン(イスラム戦士)から、異端者の支援およびほう助の罪に問われている」と書かれていた。「仕事を辞めて、イスラム首長国のムジャヒディンに支援と協力を提供するよう命じる」

手紙はさらにこう続く。「アラーを満足させる行いをすれば、あなたに害が及ぶことはない」

しかしミナは「彼らに見つかれば100%殺されるだろう」と言う。9月13日にはパンジシール州で、かつての同僚がタリバンの戦闘員らに処刑されたと語った。この件については、本誌独自の調査では確認が取れなかった。

法律の専門家は「恩赦の対象外」

ミナによれば、タリバン幹部は現在、彼女の居場所に関する情報に50万パキスタンルピー(約3000ドル)の報奨金を提示している。アフガニスタン人の平均世帯年収約4000ドルに近い金額だ。

アフガニスタンの実権を握ったタリバンは、社会のあらゆる側面に対する支配を確立するために、禁欲的なゲリラ組織から、機能する政府へと転身を遂げようとしている。その彼らにとって、ミナが進めてきた調査はきわめて都合が悪い。

「彼らは子どもたちを使って、道路や車に爆弾を仕掛けるのを手伝わせた」とミナは本誌に語った。「その子どもたちの多くが命を落とした」

彼女がとりわけ危うい立場にあるのは、ハザーラ族の出身だからだ。ハザーラ族はアフガニスタンの人口の10~20%を構成する少数派民族。1990年代のタリバン政権下では弾圧され、タリバンによる虐殺も複数回なされた。

「タリバンは女性が働くことを認めないだろう」とミナは言う。タリバンは前政府関係者に対する恩赦を発表したが、法律の専門家や一部の警察官は恩赦の対象外だとも言っている。

タリバンは8月にアフガニスタン全土と首都カブールを掌握して以降、かつてのタリバン政権との違いをアピールするために、穏健な姿勢を示そうとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ全域で通信遮断、イスラエル軍の地上作戦拡大の兆

ワールド

トランプ氏、プーチン氏に「失望」 英首相とウクライ

ワールド

インフレ対応で経済成長を意図的に抑制、景気後退は遠

ビジネス

FRB利下げ「良い第一歩」、幅広い合意= ハセット
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 10
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中