最新記事

ネコ

ネコはなまけものなのか? 何もせずに得られる餌をより好むとの研究結果

2021年9月7日(火)18時15分
松岡由希子

はい、そうですが、何か?  Andrey Zhuravlev-iStock

<哺乳類や鳥類の多くは、労せずに食餌を得るよりも、何らかの対価を払って得ることを好む傾向があるが、ネコは例外だった......>

イヌ、クマ、ブタ、齧歯類、霊長類などの哺乳類や鳥類の多くは、労せずに食餌を得るよりも、何らかの対価を払って得ることを好む傾向があり、これを「コントラフリーローディング(逆たかり行動)」という。

性別、年齢、差異はみられず、活動的なネコでさえ...

一方、ネコにはコントラフリーローディングがみられない。1971年に発表された研究論文では、実験室で、飼い猫6匹に、タスクをこなすと得られる餌とトレーから自由に食べられる餌を与えた結果、すべての飼い猫がトレーにある餌を食べたことが示された。

米カリフォルニア大学デービス校のミケル・デルガド博士らの研究チームは、この研究結果に対して「家庭環境にいるネコならばコントラフリーローディングがあるのではないか」、「活発なネコにはコントラフリーローディングがあるのではないか」との仮説を立て、規模を拡大して同様の実験を実施。その研究成果を2021年7月26日に学術雑誌「アニマル・コグニション」で発表した。

この実験では、室内で飼育されているイエネコ17匹を対象に、ネコが餌を探しながら食べる仕掛けを施した給餌器「フードパズル」と餌がそのまま入っているトレーを床に配置。イエネコに活動量計を装着し、室内の様子を動画で撮影して、行動を観察した。

その結果、いずれのイエネコも「フードパズル」の餌よりもトレーの餌を多く食べ、うち8匹は「フードパズル」の餌にほとんど手をつけなかった。また、性別、年齢、「フードパズル」の経験の有無で差異はみられず、活動的なネコでさえ、トレーの餌を選んだ。

なぜネコにコントラフリーローディングがみられないのかは謎

とはいえ、ネコが「フードパズル」を好まないというわけではない。デルガド博士らの研究チームは、2016年4月に発表した研究論文で、「フードパズル」がネコの減量や問題行動の軽減などに寄与することを明らかにしている。

なぜネコにコントラフリーローディングがみられないのかは謎のままだ。デルガド博士は、獲物を待ち伏せして捕らえるネコの狩猟行動に着目し、「『フードパズル』がネコの狩猟本能を刺激しなかったのかもしれない」と考察している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ドイツ首相、ガソリン車などの販売禁止の緩和を要請 

ワールド

米印貿易協定「合意に近い」、インド高官が年内締結に

ワールド

ロシア、ワッツアップの全面遮断警告 法律順守しなけ

ワールド

ハンガリー首相、ロシア訪問 EU・NATO加盟国首
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 10
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中