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アフガニスタン、複雑怪奇なテロ組織の協力と対立の関係を紐解く

The Close Ties

2021年9月8日(水)11時58分
サジャン・ゴヘル(アジア太平洋財団ディレクター)

ISは当初、タリバンに直接ダメージを与えようとした。15年6月12日には、ISのオンライン英字機関誌ダビクで、タリバンの創始者であるムハンマド・オマルがとっくに死んでいることが暴露された。タリバン上層部が何年も隠してきた事実だ。

このエピソードは、タリバン内部の足並みの乱れを露呈した。オマルの副官だったアクタル・ムハマド・マンスールが最高指導者に就任したものの、タリバンを辞めてIS-Kに加わる者が相次いだ。

16年にマンスールがアメリカのドローン攻撃で死亡し、現最高指導者のハイバトゥラ・アクンザダが後を継いでからも、タリバンからIS-Kへの「人材流出」は止まらなかった。原因はイデオロギーよりも、リーダーや縄張り、それに麻薬取引による利益配分に関する不満だった。

IS-Kの最大の拠点である東部のナンガハル州は、パキスタン国境に近い麻薬貿易の要衝だ。IS-Kはこの麻薬ビジネスでハッカニ・ネットワークと協力してきた。

同ネットワークのトップであるシラジュディン・ハッカニは、タリバンの副司令官でもあり、アルカイダと非常に緊密な関係にある。彼らはIS-Kの進出前からアフガニスタンに自爆テロという戦法を導入して、米軍に多くの犠牲者をもたらしてきた。

ハッカニ・ネットワークとIS-Kの共通点

ハッカニ・ネットワークは、パキスタンの軍統合情報局(ISI)とも緊密な関係を築いた。ISIは、ハッカニ・ネットワークに武器や訓練や資金面の支援を行うとともに、パキスタン国内に潜伏場所を提供した。彼らがこの20年間存続できたのは、ISIのおかげといってもいい。

こうした経緯から、タリバンとIS-Kは反目していると思われるようになった。ジョー・バイデン米政権も今回の退避に際し、IS-Kからの攻撃に対する防衛について、タリバンをある程度、当てにしていた。

タリバンは複数の派閥で構成され、それぞれ独自の指導部、組織を持ち、アフガニスタン国内の領土を支配している。IS-Kとハッカニ・ネットワークは、実際には戦術的・戦略的な合致点が少なくない。アフガニスタンのアシュラフ・ガニ前政権および西側諸国という共通の敵もいる。

20年3月25日にカブールでシーク教の寺院が襲撃され、自爆テロと銃撃戦で少なくとも25人が死亡。IS-Kが犯行声明を出した。

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