最新記事

火星探査

NASAが火星生活の模擬実験の参加者を募集

NASA Is Recruiting for a Mars Simulation Mission: Here's How to Apply

2021年8月10日(火)17時26分
アリストス・ジョージャウ
マーズ・デューン・アルファのイメージ

3Dプリンターを使った火星居住施設「マーズ・デューン・アルファ」のイメージ ICON/NASA

<1年間にわたって仮想火星居住環境で活動を行う「乗組員」に求められる資質は>

米NASAが、火星での生活を想定した1年間の模擬実験に参加する希望者を募集している。

このミッションは、3回にわたるCHAPEA(乗組員の健康およびパフォーマンス探査研究)の第1弾で、開始は2022年秋を予定している。

各ミッションに参加する乗組員は4人。この4人が、テキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センター内にある仮想火星居住環境「マーズ・デューン・アルファ」で一緒に生活および活動を行う。ここは建設用3Dプリント専門企業のICONが3Dプリンターを使って製作した、広さ約158平方メートルの施設だ。

マーズ・デューン・アルファには、複数の個室、共有のキッチンが1つ、浴室が2つ、作業エリアが1つ、医療・娯楽・フィットネス専用のエリアに加えて、穀物栽培のためのエリアが備えられている。

同施設は、火星での長期滞在で直面し得るさまざまな困難の模擬体験用に設計されている。乗組員たちは限られた資源で生活しなければならず、通信の遅延や孤立、機器の故障や大量の作業などの環境的ストレスを経験することになる。

地上での模擬実験は「課題の把握と対処に役立つ」

また乗組員たちは同ミッションの中で、船外活動の模擬訓練を行い、ほかにもNASAチームとのやり取り、居住施設の維持管理、穀物の栽培や科学実験などの活動も行う予定だ。心と体の健康やパフォーマンスなど、さまざまな要因についてのデータ提出も求められる。

このミッションの目的は、地球外の惑星での長期滞在に個人がどう反応するかを評価することだ。CHAPEAの第2弾と第3弾は、それぞれ2024年と2025年に実施が予定されている。各ミッションから得られるデータは、将来の月や火星への有人ミッションにとって大きな意味を持つものとなるだろう。

ヒューストンにあるNASAジョンソン宇宙センターのフード・テクノロジー担当主任研究員であるグレース・ダグラスは、「今回の模擬実験は、火星表面での生活に伴う複雑なニーズへの解決策を試す上で、きわめて重要だ」と声明の中で述べ、さらにこう続けた。「地球上でのシミュレーションは、宇宙飛行士たちが実際に月や火星に行く前に、彼らが直面する物理的・精神的な困難を理解し、それに対処するのに役立つだろう」

NASAは2024年までの有人月面着陸を目指す「アルテミス計画」の成功を足がかりに、最終的には火星に宇宙飛行士を送り込みたい考えだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

3日に予定の米イラン第4回核協議、来週まで延期の公

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、予想

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中