最新記事

コロナワクチン

中国シノバックのワクチンで死者が95%減、あのブラジルで起こった「奇跡」

Brazilian City Sees COVID-19 Deaths Fall by 95% After Sinovac Vaccine Used

2021年6月2日(水)19時27分
ゾーイ・ストロゼウスキ
シノバックのワクチンを携え、ブラジルのアマゾナス州を訪ねる医師

シノバックのワクチンを携え、ブラジルのアマゾナス州を訪ねる医師 Bruno Kelly - REUTERS

<シノバックの実験に手を挙げた人口5万人足らずの小都市が、ものの数カ月で新型コロナを制圧。それも全人口ではなく4分の3でいいことがわかった。貧しい国にとっては二重の朗報だという>

ブラジル南東部にある人口4万6000人の小都市セハナで、成人した住民全員に中国の製薬会社シノバック・バイオテック社の新型コロナウイルスワクチンを接種する実験が行われた。その結果、市内の死亡者数が95%減少した。

死亡率の低下に加えて、市内の病院の入院率が86%減少し、新型コロナウイウルス感染症の発症が80%減少した、とAP通信は伝えた。市の外では感染が拡大し、将来の見通しも立たないなかで、セハナだけがウイルス感染の恐怖を免れる安全地帯になった。

安い軽食やスナックを提供する店で働くロジェリオ・シルバは「店は、以前と同じくらいたくさんのお客さんがきている」と語った。「数週間前には、店の前に列を作る客も、店内で食べる客もいなかった。私は客にトイレをつかわせなかった。今はすべてが元通りだ」

セハナで現在、新型コロナウイルス感染症による重篤な状態にあるのは、ジェラルド・セザール・レイス博士の診療所に入院している63歳の女性だけだ。この女性はファイザー社製ワクチンの接種を望んで、シノバックのワクチン接種を拒否したのだ。成人市民の大半は実験に参加することを選んだ。

WHO(世界保健機関)は6月1日、18歳以上の人々のための緊急時使用リストにシノバック社製ワクチンを登録した。中国製ワクチンとしてはシノファーム社製ワクチンに続く2例目となる。

以下は、APによるリポートだ。

ワクチンの有効性は確実

セハナ市での集団接種実験は「プロジェクトS」と呼ばれ、4カ月にわたって現地の住民にシノバック製ワクチンを接種した。5月31日に発表された予備的研究結果は、人口の4分の3がシノバックのワクチン接種を完了すれば、全体の感染を制御できることを示した。

「最も重要な成果は、住民全員にワクチンを接種しなくても感染を制御できることがわかったことだ」と、この研究のコーディネーターを務めたサンパウロ州立ブタンタン研究所のリカルド・パラシオス博士は語った。

この実験結果は、何億もの人々、特に発展途上国の人々に希望をもたらすものだ。エジプト、パキスタン、インドネシア、ジンバブエなども、ファイザーやモデルナのワクチンより安価な中国製ワクチンに依存している。

セハナ市の住民は年齢と性別に関係なく地理的に4つのブロックに分けられ、成人の大半が4月末までに2回の接種を受けた。31日に発表された結果は、3つのブロックがワクチン接種を完了した後、新規感染が減少したことを示していた。各地域のワクチンの接種率が同じかどうかは明らかにされていない。

このプロジェクトは「ウイルスから身を守る方法があること、ワクチンが有効であることを示している。間違いない」と、ブラジルの保健規制当局の創設者の一人で医学部教授のゴンサロ・ベチーナはAP通信に語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドネシア中銀、予想外の0.25%利上げ 通貨下

ワールド

再送-イスラエル、近くラファに侵攻 国内メディアが

ビジネス

ECB、追加利下げするとは限らず=独連銀総裁

ビジネス

焦点:企業決算、日本株高再開の起爆剤か 割高感に厳
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 6

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中